2015年相続税対策に「金製仏像」購入の落とし穴

デイリーニュースオンライン

仏壇・仏具の詐欺に要注意(写真はイメージです)
仏壇・仏具の詐欺に要注意(写真はイメージです)

 2015年1月1日からいよいよ相続税の増税が始まる。相続税とは、亡くなった人が持っていた土地、建物、お金などをもらった人が支払う税金のこと。増税は、遺産の一定金額までは税金がかからない基礎控除額を縮小することによって行われる。現在の基礎控除額は「5000万円+法定相続人1人あたり1000万円」だが、1月以降は「3000万円+法定相続人1人あたり600万円」と4割も縮小してしまう。基礎控除額の縮小に伴い、課税対象となる世帯数は1.5倍に膨らむ見通しだ。

 こうした中、最近では相続税の節税対策の一環として生命保険に加入したり、生前贈与で相続財産を減らす高齢者が増えている。

相続税対策で仏壇・仏具を買う理由とは

 金製の仏像や墓石などを購入する高齢者も相次いでおり、中には数年にわたって仏像や位牌、おりんなどを買い続け、総額数千万円に達する仏壇セットをそろえた人もいる。相続税の改正が決まった2013年度あたりから、金製の仏壇、仏具の売り上げが伸びるようになり、今年に入ってからは前年比3割増で推移しているという。

 ではなぜ、金製の仏具がこれほどの人気になっているのだろうか。墓石や仏壇、仏具のように日常的に礼拝の対象となるものは相続税が非課税になるというのがその理由だ。

 純金製の「おりん」などできるだけ値段の高い仏具を購入しておいて、当人が死亡した後、相続人が仏具をまとめて売却して換金すれば、その分は相続税の負担を免れることができるという算段である。

 しかし、この節税方法には「落とし穴」があることに注意して欲しい。一般に、墓石や仏壇、仏具などは高額になればなるほど、貴金属よりも加工料が値段の大部分を占めるという特徴がある。このような場合、仏像を換金するときに購入時よりも買い取り価格が下がってしまうことが圧倒的に多い。その時々の相場にもよるが、最悪、購入時と売却時の価格の差が、節税できた金額より大きくなってしまい、実質的に損失を被るケースもある。

 また、節税対策で購入した仏具の買い取り価格を高くするために、傷などがつかぬよう飾るだけという状態にしておくと、「仏具」ではなく「美術品」とみなされて、相続税の課税対象に含まれてしまうといったケースもある。

高齢者を狙った「仏像買い取ります詐欺」に注意

 さらに、最近では仏像人気につけ込んだ「仏像詐欺」が増加しており、高齢者は十分な注意が必要である。「仏像詐欺」というのは、消費者に電話をして高額の仏像を買わせる詐欺のことだ。

「仏像詐欺」の典型的な手口を紹介すると、まず高齢者夫婦の自宅に「有名な仏師が彫った仏像が今なら割安な価格で購入できます」と業者が電話をかけてくる。被害者が「どうしようかな」と迷っていると、「とりあえずカタログをお送りしますから」といって、カタログを送ってくる。「あるお寺の運営が厳しくなっていて、住職が仏像をこっそり売りに出します」とか「仏像のコレクターが、保管場所がなくなったので、仏像を売りに出すそうです」などといかにもありそうな状況説明をしてくる場合もある。

 被害者の自宅に仏像のカタログが届くタイミングをみはからって、今度は「カタログに載っている仏像を買い取りたいのですが、その仏像はカタログが届いた人しか購入できない仏像なんです……だから、あなたが購入された価格の2倍で買い取りますよ」と別の業者が電話をかけてくる。一般的に、消費者は「カタログが届いた人しか購入できない」=「あなただけ特別」という言葉に弱いことがわかっている。詐欺師はこのような消費者心理に巧みにつけ込んでくるのだ。

 被害者は「自分が仏像を買って後悔しても、買い取ってくれる仏具業者がいるなら安心」と思ってつい買ってしまう。数日後、自宅に注文した仏像が届いたが一見して安っぽい感じがする。実際、送られてきた仏像は二束三文の安物だった。

 実は、仏像を売ると電話をかけてきた業者と、仏像を買うと電話をかけてきた業者はグルになっていたのだ。当然、業者が被害者から仏像を買い取ることはない。契約書にある連絡先に電話してもつながらない。

 一度、仏像を購入するとその後、何度も電話がかかってきて、4体、5体と際限なく買わされてしまう被害者もいる。また、断っているのに仏像を郵送して強引に代金の支払いを求める「送りつけ」の手法を使うケースもある。

著者プロフィール

エコノミスト

門倉貴史

1971年、神奈川県横須賀市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、銀行系シンクタンク、生保系シンクタンク主任エコノミストを経て、BRICs経済研究所代表に。雑誌・テレビなどメディア出演多数。『ホンマでっか!?』(CX系)でレギュラー評論家として人気を博している。近著に『出世はヨイショが9割』(朝日新聞出版)

公式サイト/門倉貴史のBRICs経済研究所

(Photo by IoSonoUnaFotoCamera via Flickr)

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