1月は株安…21世紀型の“新”アノマリーとは?

デイリーニュースオンライン

Photo by Dick Thomas Johnson via flickr
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 2014年12月29日の原稿で、『【株価予測】大荒れの年末相場は急落した銘柄を狙え』と題し、〝節税対策売り終了による、実質新年相場の潮の変わり目〟について書いた。ほかにも、新年相場入りが〝潮の変わり目〟となる傾向があるので、今回はそれを紹介したい。

【株価予測】大荒れの年末相場は急落した銘柄を狙え

  次の表は、2000年以降の1月と12月の日経平均株価の騰落状況をあらわしたものである。

 これを見ると、1月は12月に比べて明らかに分が悪い。ITバブル崩壊後、相場が上昇基調に転じる2003年以降では、さらにその傾向が顕著となっている。

 株式相場には、以前から「12月の株価は安く、1月の株価は高い」というアノマリー(理論的に説明できない傾向や現象)があった。このアノマリーについては、「12月は大口投資家の節税対策売りが出やすく、1月はその大口投資家の買い戻しで反発するし、1月からは欧米勢の新規資金による買いが入るから」という一応の理由付けがなされていたが、2003年以降はそのアノマリーが完全に逆転していると言える。

 ある証券アナリストは、この現象が起きる根拠をこう話す。

「欧米の投資信託のほとんどは、12月が決算。つまり、12月はその年のパフォーマンスを決める大事な月であり、いわゆる〝ドレッシング買い〟が入りやすいんです。実際に、米国の投信大手のファンドマネージャーは12月にドレッシング買いを入れることがあると言っていました。ドレッシング買いによって米国市場は12月に高くなりやすいため、日本株もそれに連れ高する形で上昇しやすいということだと思います」(証券アナリスト)

〝ドレッシング買い〟とは、機関投資家が運用するファンドのパフォーマンスを良く見せるため、保有している株などの金融商品に買いを入れること。日本では「お化粧買い」とも呼ばれ、以前から相場用語として用いられている。もっとも、全体相場や個別銘柄の状況にもよって効果も変わってくるため、株価の値動きだけを見て実際にドレッシング買いが入っているかどうかを判断するのは困難。ただ、実際に運用担当者がそう話しているわけだから、12月の株価上昇にはドレッシング買いが一役買っていることは間違いなさそうである。

要因は日本企業の自社株買いにある!?

 ただ、ここで1つ疑問が生まれる。「12月の株価は安く、1月の株価は高い」という〝旧〟アノマリーが語られていた時代も、ドレッシング買いはあったのではないか。それならなぜ、2000年代に入ってアノマリーの逆転現象が起きたのか、ということだ。

「ここからは推測になるが、1月の相場が下落する傾向については、日本企業の自社株買いが関係しているのではないか」(前出の証券アナリスト)

 自社株買いは、企業が株主への利益還元の一環として行うもので、株式市場、あるいは市場外で自社の株を買う行為である。日本では、2001年の商法改正によって自己株式の取得・保有が自由化され、実質的な全面解禁となった。意外と歴史の浅い制度だ。

 それ以降、企業による自社株買いは右肩上がりで増え続け、2007年には総額4兆円を突破。リーマン・ショックの翌2009年には一時1兆円を大きく割り込むなど急減したが、再びジワジワと増え続け、2015年3月期は3兆円近い自社株買いが予想されている。

「実は、1月は例年、自社株買いが少ないんです。年末年始で事務手続きが滞ってしまいがちなことに加え、3月決算の企業は第3四半期、12月決算の企業は通期決算の集計をしている最中なので、このタイミングで自社株買いをするとインサイダー取引になりかねないからです」(前出の証券アナリスト)

 自社株買いは、今後も増え続ける可能性が高い。というのも、2014年1月に算出が始まった新しい株価指数「JPX日経インデックス400」では、採用銘柄の選考基準にROE(株主資本利益率)が入っていて、上場企業の間でROEを高めようとする動きが目立つようになったからである。そのROEを高めるのに最も手っ取り早い方法が自社株買い。今後、自社株買いが株式相場に与える影響力はますます大きくなるだろう。

 もし、自社株買いの多寡が「12月の株は高く、1月は安い」という〝新〟アノマリーの一因になっているとすれば、今後もこの傾向は続くと思われる。

出遅れ銘柄を狙うのもひとつの手

 ちなみに、前述のファンドによる〝ドレッシング買い〟に、新年相場のヒントが隠れている。ドレッシング買いでは、その年に買った株を買い増すわけだから、一時的にその銘柄をオーバーウエイト(持ち過ぎ)状態になっている銘柄もあるだろう。また、持っている銘柄の株価が上がることで、割高になっている可能性がある。新年相場入り後はファンドもその銘柄に執着する必要性が薄れるので、一部で保有している割高な銘柄を処分し、割安な銘柄に乗り換える動きが出そうだ。

 2014年は、円安を背景に自動車や機械、電気機器などの輸出関連株が買われる一方、鉱業や医薬品、非鉄・金属、情報・通信、不動産、その他金融といったセクターでは出遅れている銘柄が少なくない。

「新年相場では、2014年に買われていたセクターが売られ、出遅れている割安な銘柄が買われる可能性もあります」(証券アナリスト)

 新アノマリーを考えると1月序盤は様子見が無難と言えそうだが、先行者メリットを得たいのであれば、2014年の出遅れ銘柄を狙ってみると面白いかもしれない。

新井奈央(あらいなお)
マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株−1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。
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