一発屋芸人に成り果てた矢口真里の行方

デイリーニュースオンライン

もはや本格復帰は不可能か!?
もはや本格復帰は不可能か!?

 年末年始のテレビで印象的だったのは、矢口真里がいくつかのバラエティ番組に出ていたことだ。「自宅不倫」の報道が出たことがきっかけで、約1年半にわたり謹慎していた矢口は、2014年10月に『ミヤネ屋』(日本テレビ系)でテレビに復帰。その後、『今だから言えるナイショ話』(TBS系)、『クイズ☆正解は一年後』(TBS系)、『ワイドナショーSP』(フジテレビ系)などに立て続けに出演。本格的にバラエティ番組に復帰しようとしていることは明らかだった。

 それぞれの番組で、矢口は謹慎中の生活や現在の恋人との関係について赤裸々に語っている。そんな彼女に対して、共演する芸人たちは容赦なく「バラエティの洗礼」を浴びせる。『今だから言えるナイショ話』では、FUJIWARAの藤本敏史が「めっちゃ男好きやん」とあきれ果て、ケンドーコバヤシは矢口を「性獣」呼ばわり。

 さらに、『クイズ☆正解は一年後』では、矢口が登場すると有吉弘行が「どのツラ下げて出てきてんだ、てめえ!」と噛みつく。そして、「矢口はヤラせてくれんのかな?」と堂々とセクハラを仕掛けると、おぎやはぎの矢作兼もそれに乗っかって「ヤラせろ!」と続けた。藤本は彼女を「性欲モンスター」と名付けた。……と、ここまで書いたところでは、芸人たちの手荒い歓迎も済んで、矢口はこれからバラエティの世界に順調に復帰していくのだろう、という感じがするかもしれない。

 だが、私の印象は違った。むしろ、このままでは復帰していくのは難しいかもしれない、と思ったのだ。それらの番組を見ていた視聴者の中にも、似たような印象を持った人はいるのではないだろうか。テレビ出演を続ける彼女の姿には、どうにもぬぐい去れない違和感があった。

〝ワイプモンスター〟はどこへやら……

 矢口は「夫を持つ身でありながら、不倫の愛に溺れて、離婚してしまった張本人」としてさんざんイジられた。そして、ある程度まではそういう扱いを受け入れているようにも見えた。だが、その受け入れ方が、どうにもすっきりしない感じがする。ひとことで言えば〝キャラが仕上がっていない〟。

 不倫や浮気は、世の中では良くないことだとされている。それをやってしまったことで、矢口真里というタレントはキャラを変更する必要に迫られた。これからは不倫という汚名を背負いながら、それをどう活用するかを考えなくてはいけないのだ。

 現時点では、その新しいキャラが仕上がっていないように見える。イジられたときの矢口は、強気に反論するわけでもなければ、落ち込んだり泣き出したりするわけでもない。ただ、「どういう顔をすればいいか分からない」という顔をしながら笑っていただけだった。それを見せられても、視聴者はモヤモヤした気持ちになるだけだ。

 もちろん、「反省しろ!」などと陳腐なことを言うつもりはない。矢口がこの件について本当に反省しているのかどうか、ということは別にどうでもいい。それはバラエティを楽しむ一視聴者としては、大した問題ではないのだ。反省している人にはしているなりのやり方があるし、反省していない人にはしていないなりのやり方がある。どちらにせよ、今のテレビバラエティ業界では、キャラが仕上がっていない人を出している余裕はない。いわば、今の彼女は〝自宅不倫〟という一発芸だけで各番組を転々としている〝一発屋〟状態。これから息の長い活躍を目指すなら、もっとキャラを固めなくてはいけない。

 謹慎前の矢口は、VTRを見ているときのリアクションのうまさに定評があり、〝ワイプモンスター〟と呼ばれていた。だが、今の矢口にはワイプ芸さえも難しい。例えば、〝妻に不倫をされた夫〟のVTRを見て、矢口はどんな顔をすればいいのか。自分のキャラをあいまいにしている限り、彼女には正しいリアクションができないのだ。

 かつての矢口は、VTRを見てそれにふさわしい無難な反応をしていれば良かった。だが、今はそうはいかない。現在の矢口は、見る側ではなく見られる側だ。ワイプモンスターから性欲モンスターへと変わり、自分が見られる側の人間であるという覚悟を持ってこの逆境を乗り越え、ひと皮むけたタレントになってもらいたいものである。

ラリー遠田
東京大学文学部卒業。編集・ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『バカだと思われないための文章術』(学研)、『この芸人を見よ!1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある
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