殺人や強盗は日常の風景…フィリピンのスラム街に行ってみた

デイリーニュースオンライン

フィリピンのスラム街・トンド地区(写真/丸山ゴンザレス)
フィリピンのスラム街・トンド地区(写真/丸山ゴンザレス)

 東南アジアで注目を集めているフィリピン。リーズナブルな英語学校への留学、豊富な自然を堪能できるダイビングやマリンスポーツなどを積極的にアピールしており、日本人の人気も高まってきている。

 その一方で治安が良くないというイメージもある。実際、昨年はタクシーに乗っていた日本人男性がバイクに乗った男に銃撃されて殺される事件が起こるなど、ほかにも同様の殺人事件が起きているので、安全とは言いがたいのも事実のようだ。

殺人や強盗なんてニュースにもならない

 フィリピンのもつ裏の顔を探るべく、もっとも治安が良くないとされるスラム街の犯罪事情を調べるために現地で取材した。

 訪れたのは中心部から車で20分ほど北西方向に進んだ沿岸部、トンド地区である。このエリアには全体的に低所得者層が住んでいて、なかでもひときわ貧しいエリアとしてスラム街も点在している。この場所がどれほど危険なのか、現地在住のフィリピン人(50代、観光業)に尋ねてみると、

「殺人や強盗なんて多すぎてカウントされないし、当たり前すぎてニュースにもならない」

 こちらをビビらせようとしているのではなく、現地人にしてもこの認識なのだ。ところが、いざ踏み込んでみると「おや?」と困惑をするほど平和だった。子どもたちはそこかしこで遊んでいるし、道行く住民たちも気さくに挨拶してくれる。

 ここは本当に危険なエリアなのか。そんな疑問が生まれるほどのどかな雰囲気だ。住民たちに本当のところはどうなのか話を聞いてみると時間帯によって違うということだった。犯罪が起きるのは、日が暮れてから。明るいうちは起きてもスリや窃盗ぐらいだという。

 筆者が取材したスラムの住人であるAさん(40代)には、奥さんと娘さんがいた。「夜になったら女は外に出さないよ。強盗よりもレイプが怖いから」と、普段から警戒していると教えてくれた。

 夜のスラム街ではレイプのみならず殺人や強盗も多い。しかし、実はスラム内で起きている凶悪事件の犯人たちは住民ではないのだという。

「仕事でここ(スラム)に来た連中がやるんだよ。道とかわかっているから夜でも動けるんだ」

 Aさんは、外部の人間が犯行に及んでいると教えてくれた。スラム街のセキュリティは住民たちから選出された警備員が請け負っていた。彼らに実情を聞いても同じく「外部の人間」による犯行が多いとの答えだった。

 さらに「セキュリティといっても、街の人間同士の争いの仲裁ぐらいで、パトロールなんかしないよ。外から来た人間が徘徊している夜なんて危なくて歩けないよ」と、素っ気なく言われた。

 夜のスラム街はいかに危ないのか。それはよくわかったつもりだったが、犯罪者よりもっと危ない存在がいるという。多くのスラムの住人たちから指摘されたのは「犬」だった。

 日中は寝ていたりして大人しい犬が大半なのだが、夜になると一変する。野獣となった犬が人間を襲ってくる。これは珍しくなく、スラムの住人たちも噛まれてしまうことがあるというのだ。恐ろしいことに犬の多くが狂犬病のウィルスを宿しており、噛まれた住人たちが命を落としている。

 現在、世界中で狂犬病による年間の死亡者数は推計5万5000人(そのうち、アジアでは3万1000人、フィリピンでも年間200人以上が死亡している。

 狂犬病は発症すると100%死ぬとされる危険な感染症である。スラムに行っても犬には近寄らないほうが良さそうだ。

(取材・文/丸山ゴンザレス)

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