【大相撲初場所】待望の「日本人横綱」誕生なるか

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若貴以来の「連日満員御礼」だが、相変わらず日本人力は不甲斐なく…
若貴以来の「連日満員御礼」だが、相変わらず日本人力は不甲斐なく…

相撲人気復活の一方で不甲斐ない大関陣

 大相撲の人気が復活の兆しを見せている。東京・両国国技館で開催中の大相撲初場所(一月場所/1月11日〜1月25日)が、東京場所としては18年ぶりに一場所全15日間「満員御礼」となることが21日にわかった。これは、若乃花・貴乃花兄弟の「若貴フィーバー」が続いていた1997年の初場所以来で、東京場所以外を含めても2001年の春場所(大阪)以来の快挙である。

 この背景には、華のある力士・遠藤と怪物的パワーを誇る逸ノ城という二人のニューフェイスの存在がある。時津風部屋の暴行事件や八百長疑惑など、一連の不祥事以降行われていなかった天覧相撲も4年ぶりに行われるなど華やかなニュースもあるが、一方で、相変わらずだらしないのが大関陣だ。

勝率は申し分ない超優秀大関、稀勢の里

 期待されたホープの2人だが、12日目を終えて遠藤、逸ノ城とも4勝8敗と負け越してしまった。対して依然全勝の白鵬は大鵬の大記録を塗り替えるべく全勝街道まっしぐらだ。

 対照的なのが2人の横綱。日馬富士が2敗に、西横綱の鶴竜は3敗に後退。対する白鵬には微塵の隙もなく、早くて13日目に優勝決定。33回目の金字塔を打ち立てるのは確実な状況だ。

 そして、今場所もファンを嘆かせるのが稀勢の里、琴奨菊、豪栄道の三大関。2敗をキープする稀勢の里は合格点だが、琴奨菊はどうにか勝ち越してカド番を脱出、豪栄道は7敗で文字通り土俵際。大関陥落もありうる状況だ。「大関がだらしない」のは今に始まったことではないが、白鵬が毎場所、天皇賜杯を手にするたびに、日本人横綱を心待ちにするファンはがっかりする。

 さて、三大関の大関昇進後の成績をみると、実力や堅実さが如実に違う。

 昨年九州場所終了時点での大関在位場所数は、稀勢の里18場所、琴奨菊19場所、豪栄道2場所。大関勝率は稀勢の里が.692、琴奨菊.588、豪栄道が.433となっている。

 待望の日本人横綱にもっとも近い存在ながら、毎場所のように期待を裏切り「不甲斐ない」とファンを嘆かせる稀勢の里だが、大関勝率.692(187勝83敗)は大関として申し分ない成績。大関勝率も、横綱昇進を果たせなかった大関32名(年6場所制以降)の中でも群を抜いてトップ。そればかりか、現役横綱の日馬富士の大関勝率.671(214勝105敗)と鶴竜の.661(119勝61敗)を優に上回っている。

 にもかかわらず賜杯を手にできないのは、精神面に原因がある。象徴的だったのが初場所9日目の琴奨菊戦。得意の左四つで攻めたて、押し相撲の琴奨菊にまわしを許さないにもかかわらず、焦った挙句、右足から崩れてしまった。

 この相撲にみられた「余裕のなさ」が続く限り、稀勢の里の横綱は夢のままだろう。

万年大関の道をひた走る琴奨菊

 稀勢の里より1場所早く昇進した先輩大関・琴奨菊。大関成績.588.(154勝108敗)は稀勢の里より1分も少なく、大関19場所で10勝以上は6度しかない。平均勝ち星は8勝と「万年大関」らしい成績だ。

 横綱昇進を果たせなかった32人の大関の勝率をみると、6割台が13名(稀勢の里、琴風、把瑠都、霧島、貴ノ浪、小錦、若島津、栃東、魁皇、清圀、北天佑、貴ノ花、豊山)、5割台が16名(千代大海、琴奨菊、朝潮、琴欧洲、大麒麟、栃光、出島、北葉山、旭圀、琴光喜、若羽黒、武双山、琴ヶ濱、前の山、魁傑、増位山)、4割台が3名(雅山、大受、豪栄道)となっており、勝率別にみると「優秀大関」「万年大関」「ダメ大関」に分けられる。琴奨菊は典型的な「万年大関」だ。

 6割台の大関は13名中11名が優勝を経験しているが、歴代勝率トップの稀勢の里は未経験であり、これは相撲界の七不思議でもある。5割台の大関も16名中8名が優勝経験者だが、9勝6敗や8勝7敗の大関がずらり並んでいる。

 カド番脱出でホッとしただろう琴奨菊の場合、今後も「クンロク・ハチナナ」(※)が指定席となりそうだ。

関脇成績6割超えながら「ダメ大関」の豪栄道

 そして、期待された豪栄道は3人しかいない勝率4割台の大関である。2場所合計13勝17敗、初場所も12日目を終わって5勝7敗。残り3日間を全勝せねば大関陥落だ。残り3日の対戦相手は遠藤(13日目・決定)、琴奨菊、碧山あたりとなりそうだ。

 ちなみに負け越すと3場所で大関陥落。2場所の武双山(年6場所以前を含めると五ツ島)に次ぐワースト記録となる。

 14場所連続で関脇を務めた豪栄道の関脇時代の成績は126勝83敗、勝率.602だった。これは稀勢の里の86勝64敗.573、琴奨菊の84勝66敗.560を大きく上回っているが、大関になっての成長がみられない。

 場所後の2月3日には、ふるさと大使を務める地元・大阪府寝屋川市の成田山不動尊の節分豆まきに招待されている。大関で凱旋するはずが関脇陥落となれば、地元ファンの落胆は間違いなく、残り5日間、死に物狂いで土俵を務めるしかない。

 24歳の遠藤、21歳の逸ノ城に対し、稀勢の里28歳、琴奨菊30歳、豪栄道28歳。三大関ともゆっくりしているヒマはない。

 次の横綱が逸ノ城では、モンゴルの地で朝青龍が高笑いするだけだ。

※相撲で、一場所(15日間開催)の成績が9勝6敗止まりで、勝ち星が2桁とならない力士を揶揄する言葉。しばしば大関に対して使われる(「クンロク大関」など)。「ハチナナ」は、力不足であるも8勝7敗で都合よく勝ち越して大関を維持する力士を揶揄する言葉。

(文/小川隆行)

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