赤サンゴも金も…日本製ジュエリーに中国人成金が群がる理由

デイリーニュースオンライン

350万円の24金バッグ(写真/川口友万)
350万円の24金バッグ(写真/川口友万)

 昨年は中国漁船による小笠原沖でのサンゴの密漁が話題となり、今年も領海侵犯をする漁船が海上保安庁の警告を受けている。今、中国ではサンゴが大ブーム、中でも日本産は色が他国のサンゴよりも鮮烈なことから、高値で取引されるという。

 中国のサンゴ熱は日本市場にとどまらない。サンゴの名産地として知られる南イタリアでも、中国人によるサンゴ買い付けが凄まじい。

「現地にも買いに来ますし、サンゴはとにかく中国人ですね。カメオも産地なんですが、こちらは中国にはまったく売れないですね。カメオは素材が貝なので、興味がないようです」(貿易関係者)

 中国の富裕層は男女を問わず、金製品を身に着ける傾向にある。これは度重なる革命の名残である。元々政情不安な国であり、発言ひとつで家に警官が踏み込んでくる国だ。宝飾品はファッションよりも身に着ける財産として購入するのであり、安定した換金率が求められる。ブランドやデザインは二の次で、とにかく素材。

国際宝飾展に出品されていたデコ招き猫。マネキネコ工房あずさの、その名も『ダイヤモンドキャッツ』
金無垢の電卓。キーにはダイヤが埋め込まれている。価格は縁起担ぎの88万円。金沢エンジニアリングの『粋』シリーズは、アルミから切り出した超高級電卓だ

「素材自体に価値があるもの、売ればすぐにお金になるものに人気があります。純金やサンゴ、ヒスイなどは買っても、カメオのようにどれだけ芸術的な細工が施されているかで価値が決まるものは買わない。しょせん貝じゃないか、というわけです」(同)

サンゴの原木。これを切り出して加工し、宝飾品にする
日本産のサンゴ。30㎜サイズのサンゴは貴重で非売品

 サンゴを専門に扱う業者も、中国人バイヤーが買って行くのは、とにかく大きなものだと説明した。

「日本のサンゴは色がキレイで人気があります。赤色がきれいで“アカ”とそのまま呼ばれています。赤は縁起がいい色で、サンゴは長寿を表すのだそうです。日本産の赤サンゴは一番人気なんです」(サンゴ専門業者)

タンスの肥やしになっていた宝石が飛ぶように売れる

 こうした中国人の嗜好は意外なブームを巻き起こした。日本ジュエリー協会によると、数年前に起きた貴金属の買い取りブームは、中国への輸出目的だったのだそうだ。

「ピーク時3兆円だった日本の宝飾市場は、現在は9600億円台と大幅に縮小しています。しかしタンス預金のように眠っている宝飾資産は20兆円とも言われます。業者がタンスに眠っていたそうした宝石を買い取り、洗浄して中国に持って行くとすごく売れた。中国市場はまだ成熟していないので、20年30年前の、石の大きなジュエリーが飛ぶように売れたんです」(同協会)

 仕上げや細工の丁寧さから日本の宝飾品は中国で人気が高い。しかし最近の宝飾品はデザイン重視だ。昔の日本の宝飾品のように、これ見よがしに大きな石を使った、今の日本人には野暮ったく映る製品に人気が集まるのだそうだ。そしてノンブランドで割安感のある製品から売れていく。

 低成長の日本経済で、小売業におけるインバウンド(訪日外国人)市場は大きくなる一方だ。いくら日本製と言っても、中国人は中国のショップで売られる商品を信用していない。日本のモノは日本で買うのが一番信用できるとわざわざ日本まで買いに来る。百貨店の宝飾店売り場では、2013年に約10%だったインバウンド率が、2014年は約20%まで伸長しているという。2015年4月1日からは免税対象品の消費税免除枠がゆるくなるので、一人あたりの購入額はさらに増えるかもしれない。

 中国人相手の商売をしている会社はおおむね好調だ。中国相手に取引を始めたある会社は、昨年末のクリスマス商戦の売り上げが一昨年に比べて3倍になったそうである。宝飾関連のバイヤー向け展示会の第26回国際宝飾展(東京ビッグサイト/2015年1月20~23日)でも、そんな中国景気に押されて2000人を超す海外バイヤーが訪れ、文字通りに札束をかばんに詰め込んだ中国系バイヤーが列をなした。

 今後の宝飾業界の進展は、中国が握っていると言っても過言ではない。

(取材・文/川口友万)

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