帰国後は遠洋漁業…チャイナ・ドリーム負け組に待ち受ける貧困生活

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中国進出ブームも今や過去のものに
中国進出ブームも今や過去のものに

 1月20日に中国政府が発表した2014年の経済成長率は7.4%と、24年振りの水準にとどまった。

 中国経済の先行きに黄色信号が灯るなか、日本人も無関係ではいられない。今、チャイナ・ドリームに破れ、経済的破綻に陥っている中国在住日本人が増えているのだ。

 10年前の2005年、上海市にアパレルのOEM工場を設立した中嶋誠さん(仮名・44歳)は、苦しい懐具合をこう話す。

「従業員30人ほどの小規模工場ですが、一時は年間の利益が4000万円ほどあった。それがここ2年は毎年、数百万円の赤字。このところ、急激な円安や原材料費、賃金の高騰が続いていますが、顧客の日本企業は、価格据え置きを求めてきますから。円安政策を進める安倍政権が誕生した2012年末で、うちみたいに製造コスト差で稼ぐビジネスモデルは終わっていたんです。ただ、廃業しようにも、労働法で定められている従業員の経済補償金(退職金)を支払わなければならず、総額500万円くらいになるのでなかなか踏ん切りが付かない……。中国進出の日系下請けメーカーは、どこも似たような状態。最近、日本では中国製不良品の回収騒動も頻発していますが、品質が低下するのも無理は無い」

現地中国人より質素な生活を余儀なくされる

 また、収入が安定しているはずの駐在員にも、貧困に悩む者が出始めている。日本の中小メーカーの社員で、3年前から広東省深セン市の現地法人に赴任している向田健太郎さん(仮名・36歳)は話す。

「うちの会社では、駐在員の給与は手当も含め、日本の銀行に振り込まれる。私の場合、基本給500万円プラス駐在手当300万円で、額面は800万円なんですが、急激な円安の煽りをもろに受け、人民元換算ではここ2年で3割近く目減りしている。さらに、マンションの賃料をはじめ、中国では物価自体もここ数年で大幅に上がっている。駐在手当の支給額は、為替や物価の調整がされるのですが、それも5年に一度。前任者に比べ、実質支給額は半分ほどになっています。海外駐在すればお金が貯まると思っていたんですが、日本に残した妻子の生活費や住宅ローンもやりくりしなければなければならず、貯金を切り崩す月もあります。一応、私の肩書は現地法人代表なんですが、現地採用の独身中国人がタクシー移動したり、日本食レストランで800円くらいするランチを食べているところ、私はもっぱらバス・地下鉄で移動し、昼食はローカル食堂で300円のラーメンをすする毎日です(泣)。駐在は花形だと信じていたのに、これではモチベーションも上がらない……」

 負け組駐在員が増加する中、その煽りを食っているのが、彼らをターゲットに商売をしてきた者たちだ。広東省某市で、日本食レストラン経営する伊知川洋次さん(仮名・43歳)もその一人だ。

「ここ数年、食材費や従業員への給料、店舗の賃料はジリジリと上がっていますが、うちは料金据え置きでやっている。それでも売上は右肩下がり。円安や中国事業の不振などで、駐在員は金を持ってませんから、客単価が減っているんです。加えて、日系企業に広がるポスト中国への生産拠点移転の影響で、日本人駐在員の数自体も減っている。経営者である私も毎日店に出ても、月の利益として得られるのは20万円ほど。帰国してコンビニの店長でもやったほうがマシですよ」

帰国後の就職先は遠洋漁業に風俗無料案内所

 一方で、チャイナ・ドリームを諦め、帰国した者たちにも、厳しい現実が待ち受けているのだ。

 広東省広州市の大学に留学後、現地物流会社に入社。最後は営業部長の座にあった徳田宏光さん(仮名・34歳)も話す。

「反日感情が高まった2012年に、現地の小学校に通っていた息子が嫌がらせを受けたことをきっかけに帰国を決めたんです。その時は、日本国内で帰国した中国人材の需要は高まっていると聞いていたので、なんとかなると思っていたんです。しかし実際は、中国語能力が求められるポストは日本留学上がりの中国人に占有されていて、転職活動はままならなかった。日本での職歴もなく、無職の私には社会的信用もない。結局、今はハローワークから紹介された遠洋漁業の仕事をしています。体力的にこの仕事もあと数年しかできない。生活保護という言葉が頭をよぎりますよ……」

 最後に紹介するのは、アダルトビデオの製作会社社長を経て40歳をすぎてから中国に渡り、AV女優やストリッパーのイベントのプロモーターをしていた富田尚志さん(仮名・48歳)だ。

「2010年頃が一番儲かったね。企業のイベントや発表会に日本のAV女優やセクシータレントを呼ぶのがステイタスだったからね。ブッキングしただけで1回のイベントで100万円以上もらったこともあった。だけど、尖閣問題以降、日本人をイベントに呼ぶのはだんだんご法度になって、その後、追い打ちをかけるように習近平政権の反腐敗政策が重なった。あとこういう仕事してると同業の日本人や中国人マフィアとのいざこざも多くて、1年ほど前、大きなイベントでヘタ打っちゃって中国に居られなくなった。あぶく銭もいつの間にか消えちゃってた。結局、無一文の状態で昨年の夏、帰国しました。この年で今さら新しい事業をする気力も財力もなく、今は知り合いのツテで、都内の某繁華街の風俗無料案内所で働いてます。月給は20万円もないですよ」

 反日政策とアベノミクスにより中国在住日本人は苦境に立たされ、夢破れて帰国した者にも厳しい現実が立ちはだかる。北京五輪前後、マスコミはこぞって「チャイナ・ドリーム」を取り上げ、ブームを煽り立てた。こんな結末が待っていようとは、誰が想像できただろうか。

(取材・文/奥窪優木)

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