銀行業界「反社データベース共有」構想に早くも黄信号

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暴力団排除に向け動き出した
暴力団排除に向け動き出した

 全国銀行協会が暴力団など反社会的勢力(反社)との取引を排除するため、加盟行が警察庁の持っている暴力団関連のデータベースに問い合わせができる仕組みを構築するという。全国銀行協会の平野信行会長は1月19日、2016年度からの運用開始をメドに各銀行が預金保険機構を通じて警察庁のデータベースを利用する方針を固めた。反社との取引を排除するためで、住宅ローンやカードローンを新規融資する際、照会して判断するという。

 そもそもきっかけとなったのは、2013年9月に発覚した「みずほ銀行」問題だ。同行は系列信販会社のオリエントコーポレーション(オリコ)との提携ローンで暴力団組員らに融資を行っていた。

「このときは金融庁による行政処分や経営トップの辞任につながる大騒ぎになったのですが、融資の現場からは『身分を巧妙に偽装されたら、どうやって暴力団だと見破れと言うんだ』との声も上がっていました」(ある地方銀行関係者)

いわゆる企業舎弟のデータベースは公開不可

 しかし、銀行業界がこうした構想を打ち出すのは初めてではない。2007年、警察庁が「暴力団の資金獲得活動との対決」を方針として掲げたのに合わせ、証券業界などとともに反社データベースを構築するとしていたのだ。

 ならばどうして、「みずほ銀行問題」は起きてしまったのか。警察関係者が話す。

「反社データベースを作ると言ったって、警察の協力がなければ絶対にムリでしょう。現在までのところ、警察がそうした取り組みに協力した事実はありません。特定の個人の身元照会や犯歴照会は、警察官だってめったやたらとできるものではないんです。捜査上の必要が認められなければ、データベースを見ることは許されない。規則を破れば刑事責任を問われることもあります。いくらおカタい銀行さんが相手でも、情報の公開は難しい」

 こうした問題をクリアするため、今回は銀行が預金保険機構を通じて警察に暴力団情報の照会を行う仕組みが検討されている。同機構の職員には預金保険法で守秘義務が課せられており、情報漏えいのリスクを抑えられるとの判断からだ。

 しかしそれでも、「銀行業界が精度の高い反社データベースを築くのは難しい」との指摘がある。金融ジャーナリストが解説する。

「あまり知られていませんが、警察庁は一般の暴力団組員とは別に、経済犯罪にとくに深く関与していると見られる反社人脈のデータベースを独立して構築している。現役の暴力団組員はほとんどおらず、企業舎弟だったり、多くはカタギとして振舞っている面々です。ここに登録されている対象については、居住地などを管轄する警察本部が常時監視し、データベースを更新している。ところがここに蓄積されている情報は、よほど大事件でも起きなければ警察内部でもアクセスが認められていません。最高幹部だけが管理できる、まさに『秘中の秘』と言える核心情報なのです」

 現役の警察官ですらほとんどアクセスできないのならば、その情報が銀行業界に提供される可能性は低いと見るべきだろう。しかし銀行にとしては、「カタギとして経済犯罪に関与している」人脈の情報こそ、最も欲しいところだろう。

 これから構築されるデータベースが「画竜点睛を欠く」結果となれば、むしろ反社人脈の経済浸透を助ける結果にはならないのだろうか。

(取材・文/承山京一)

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