30代後半で派遣先が激減…アラフォー“おひとり様”貧困女子のリアル

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アラフォー「おひとり様」が風俗業界に大量就職!?
アラフォー「おひとり様」が風俗業界に大量就職!?

 貧困とは親世代の貧困、教育の不備などが密接に関係していると言われている。いわゆる「世代間を連鎖する貧困」の理論であり、学歴の低さと貧困の相関性だが、「あながちそうとも言い切れない」と言うのは、広告代理店幹部のK氏だ。

 K氏はナイトワーク全般の求人サイトの運営をしているが、同サイトの登録者の中には、学歴のある女性が貧困から登録してくる者もいるという。

「人妻風俗店などへの入店を希望するのは、30代の女性です。もともと僕自身、4年前まで人妻デリヘルの経営をしていましたが、当時はギャンブル狂、買い物依存症、ホスト狂、元AV嬢や元風俗嬢、シングルマザーと、分かりやすく属性のお金に困った女性が多かったんです。今でもナイトワーク求職者が30代の生活資金難の女性というのは変わらないんですが、最近妙に目立つのが、結婚歴も子どももいない、風俗未経験者。元一般企業の正社員や派遣社員、大卒という属性なんです」

 いわゆる「おひとり様」の属性。結婚や育児出産に煩わされず人生を謳歌する、悠々自適な印象が強い層だ。「まさにナイトワークのカジュアル感覚化かもしれない」と言うK氏だが、実際にこうした属性に該当する当事者女性に話を聞き進めると、おひとり様女性の実態が見えてきた。

住宅ローンの返済などで月20万円は必要

「8か月前にそれまで勤めていた会社を職場の人間関係のトラブルでやめてから、ずっと求職活動はしているんですが、全滅しています」

 そう語るのは、都内人妻系デリヘルの新人嬢として働くTさん(38歳)。未婚で風俗店の経験など一度もない。地方から大学進学のために上京して、そのまま東京で就職をして現在に至るが、バブル後世代にもかかわらず20代は派手だった。

「20代前半は毎週末、六本木通い。その後はダンスにハマってかなり本気でやってましたね。年に3回は海外旅行もしていました。ずっと同棲してる彼氏もいたんですが、最終的に結婚するほどじゃないってお互いが結論出して、5年前に別れました。大学は社会学部卒ですが、当時の友達で連絡が取れるのは1人しかいないです。もともと友達少ないんで。入店の理由は、生活費を減らせないのと、貯金が半分になったので……。貯金が尽きるまでに必ず次の仕事を見つけて、この仕事は辞めるつもりです」

 Tさんの現在の貯金は80万円。生活費を減らせない理由は、5年前に彼氏と別れた際に「ほとんど自棄」で購入した1LDKのマンションのローンや、カード会社のリボ払いの返済があるから。その返済金額だけでも月に最低12万円が必要だという。派遣会社にも登録しているが、担当からの連絡はこちらからしない限りない。

「断捨離ですね。働いてたときに買ったアクセサリーとか、海外旅行のお土産とか、片っ端から売ったし、習い事もやめちゃいました。それでも月に20万円はないと生きていけない。夜のお仕事は稼げるかと思ったけど、先月でちょうど20万円でした。でも、それは『新人プレミアで指名がついてるからだ』って店長に言われて、今月はたぶん16万円に届くか届かないかです。やれる仕事(プレイ)を増やせとも言われてるんですけど、未経験者にはけっこう厳しいですよね。……ダンス、結構本気だったんで、続けてれば良かったな。それで先生とかやれれば良かった。でも今は、再就職できないなら自営業で独立かなって考えています。何の仕事かはいろいろ調べているところですけど……難しいですかね」

「35歳の派遣の壁」で失職

 一方、37歳のKさんは、Tさんと同じ店に2014年夏から所属している。20代で一度結婚はしているが1年足らずで別れたと言い、職歴は派遣社員一本。食品衛生管理士の資格(国家資格)を持っていたが、いわゆる「35歳の派遣の壁」で失職した。

「よく長期派遣経験者で資格保有者なら35歳の壁はないって言いますが、そんなの全然ウソです。一度契約更新がなければ、次は見つからない。以前契約してたところは月給35万円で、一人暮らしですから、けっこういい生活していました。そこをやめてからは、全然ダメ。資格職と言っても、タイミングが合わないと、そんなに求人数があるものではありません。だから居酒屋で働いたりしてなんとか食いつなごうとしたんですが……」

 そんなKさんは、失職1年で貯金を使い果たし、2014年一度北関東にある実家に戻ったが、再び東京に舞い戻ってきた。

「実家は兄と専業主婦の兄嫁と母親が住んでまして、父は私が31歳の時に亡くなってるんで。そこで仕事も探しましたけど、同じ職種だと求人数は半分以下です。もっと言うと4分の1もないです。家にも居場所なんかあるわけないですよ。甥っ子姪っ子もいるし部屋がないから、居間のソファで寝たりして。当然兄嫁からしたら異物なわけで、もともと根本的に反りが合わない兄嫁と母と私で、情けないですけど祖父からお金借りて戻ってきたんです。だから、もう二度と戻れないし、戻る気もないんです」

 風俗で働くようになって「2か月ですさみ切った」とKさんは言う。

「自信をもって風俗やれる女のコを私は尊敬します。だって、客が汚いんです。客を憎んでます。そんな態度が表に出てるのかもしれない。全然指名が入らなくて、今は出勤調整(店から出勤日を制限される)で、週に3日しか出れません」

 TさんやKさんの所属する人妻風俗店は、そこを経営する風俗チェーンの中では「中級店」。まだマシなほうかもしれない。系列にはもっと価格帯を下げた店舗があり、そちらに所属するMさん(39歳)にも話を聞いた。すでに生活保護を受給していると言うが、もともとは大手物流の本社勤務社員で秘書課に勤め続けていた。

「元秘書ですって面接で言ったら、それをウリにしようって即採用でした。採用されたとき、涙が出ました。会社員時代、転職は1回だけで、ずっと正社員です。その他の仕事はしたことがないです。大学は英文科卒です。会社を辞めた理由は、職場イジメが原因のウツ。実は、教員免許も持っていますが、英語ができても免許持っていても、職歴が秘書のみでは、再就職はできないです。でも、この仕事に未来はないです。オリンピックが来たら英語ができる風俗嬢が需要あるっていうけど、その頃私はおばあちゃんです。(生活)保護受けて働いているので、不正受給です。でも、今だけです。今はお金を貯めて自動車の免許をとって、タクシー運転手になれたらと思っています。これ以上取材は申し訳ないのですが……強いて言えば私は結婚したいです」

 愕然とした。これは決して「風俗のカジュアル化」などではない。だが、どうして彼女たちは、ここまで落ち、そしてここから這い上あがれないのか。彼女たちにはいくつかの共通点があった。

 まず彼女たちは、地方出身で大学進学のために上京し、東京で働き続けてきた。実家はあるが、関係性は良好とは言えないし、とても頼れない。地元に戻っても友人も仕事も居場所も期待できない。また、東京にいても孤独で出会いがなく、特に相談できる「同世代・同所得・同性」の友達がいない。

 こうして共通項目を挙げて、ゾッとする。これはどこにでもいる典型的な「ちょっと孤独なアラフォーおひとり様」ではないか? 

 だが、前出・広告代理店幹部のK氏は言う。

「それでも彼女たちは、少なくとも風俗店で面接に通るだけの容姿とコミュ力はあるじゃないですか。今はよく言われるように、風俗店店長の仕事は『面接で落とすのが仕事』って時代です。力にはなってあげたいけど、慈善事業じゃないですから。だいたいそれまで「独り」を選んで、将来設計ミスってきた女でしょ? 貧困、貧困と言いますが、風俗やれるだけ彼女たちはまだ上です」

 だが、果たしてこれは、自己責任か。「おひとり様」の悠々自適なライフスタイルを散々きらびやかに喧伝してきたメディアにも責任があるように思えてならない。

 「アラフォーおひとり様女子の失職」は、隣り合わせの貧困の落とし穴そのものだ。

鈴木大介
「犯罪をする側の論理」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心に取材活動をつづけるルポライター。著作に、福祉の届かない現代日 本の最底辺の少年少女や家庭像を描いた『家のない少女たち』(宝島社)『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)、『家のない少年たち』(大田出版)『最貧困女子』(幻冬舎)などがある
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