地球滅亡に備え食糧を備蓄…モルモン教会にタダ飯を食いに行く

デイリーニュースオンライン

渋谷にあるモルモン教会
渋谷にあるモルモン教会

 17日の朝に岩手にて震度4の地震があり、2500人が避難したとのニュースがありました。東日本大震災の余震なのだそうです。また、「全国地震動予測地図」の最新版が地震調査委員会により公表され、関東地方での首都直下地震への警鐘が鳴らされています。

 しかし、東日本大震災から時間が経ったこともあり、大方の日本人の危機意識は大震災以前とあまり変わらなくなっているのではないでしょうか。

【科学】地震動予測地図 直下型が懸念される首都圏、揺れの確率が大幅に上昇(1/2ページ) - 産経ニュース

 さて、そんな今日この頃ですが、渋谷のモルモン教会(末日聖徒イエス・キリスト教会)でタダ飯が食えると聞いたので行ってきました。

 モルモン教はキリスト教系の新興宗教。エホバの証人、統一教会と並んで、いわゆる「三大異端」の一つです。……というと、なんだか怖いイメージを抱くと思いますが、実際、歴史を追って見てみるとキリスト教の「正統/異端」の違いなどは随分とふんわりしたものですから、少なくとも異端だというだけでそこまでビビる必要はありません(ニカイア公会議後など皇帝が変わるごとに正統・異端はコロコロ変化しました。そんなもんです)。

 むしろ歴史を見ると血なまぐさい過去があったことの方が怖いかと思いますが(ユタ戦争など)、少し歴史のある宗教団体は結構どこも血なまぐさい過去を持っているものですからね……。「平和主義だから」という理由で迫害されてきた再洗礼派にすら血なまぐさい過去はありますし……。

 さて、そんなモルモンさんの「スープ会」はこんな感じ。

右上のラザニアが美味しかったです。
左上のゼリーが美味しかったです。

 毎月第三日曜の礼拝の後に、みんなで懇親会を兼ねたお食事会(「スープ会」)が開かれるのだそうです。手前に見える小さな器に入った黒い液体ですが、「むっ、これは何かキリスト教系特有の食べ物なのか……!?」と気になるでしょうが、おしるこです。

 モルモン教会の中の女性の集会で「スープを作ってくる当番の人」が決まり、その人の一存で毎回スープが決まるらしいです。今日のスープはおしるこ。時には豚汁だったりシチューだったり。うーん、スープと言えばスープ……。

「なるほど、では『お食事会』ではなく『スープの会』と呼んでいるところがモルモン教特有の信仰によるものだな? モルモン教の信仰の中で『スープ』というのが大事な役割を持っているのだな?」

 と思った、そこのあなた。僕もそれを聞いてみたのですが、

「いえ。お食事会って名付けると仰々しくって。メインディッシュとか用意しなきゃいけなくなる気がしたんで……。もうちょっと軽めにスープの会ってことにしたんです」

 う、うん……。ちょっと変わったトコがあるからって何でも宗教的な理由じゃないんですよね! 宗教あるある!

 スープ以外の食事は教会の人たちが自発的に持ち寄ってくるとのこと。ただ、一応、女性の集会の中で「どんなの作ってこれますか」的な表は回ってくるそうです。うむ、無言のプレッシャーが働いていそうだ。料理の苦手な若い人たちは既成品のお菓子などを持ち寄ってくるそうです。

最低でも72時間分の保存食を用意

 そして、モルモン教会と言えば、保存食を蓄えていることでも知られています。

「ウチは末日聖徒イエス・キリスト教会って言うでしょう? 今は世の末だ、最後の世が来る時に地球は滅亡する、それがいつかは分からないけれど、そのための準備をするように、1年間の保存食を確保するようにと本部から言われているんです」

 とのこと。そう聞くと随分怖い感じを受けるでしょうが、それはそれとして通常時の災害対策でもあるようです。

「独身の若い人でも最低でも72時間分の保存食キットは用意するようにと言われてますね。というのは、阪神大震災の時も、とにかく三日間は物がなくて何も届かなかったんだそうです。そこさえ乗り切れば後はきっと政府が何とかしてくれるので、最低でも72時間をと……。私たち教会員は一年分を用意するわけですが、72時間分は教会員以外の人もやった方がいいと思いますね」

 うん、これは全くその通りで、説得力のあるお話。実際に阪神大震災の際にはモルモン教徒には蓄えがあったので周りの人に分け与えることもできたとのこと。「自分たちに蓄えがなければ隣人愛も実践できないですし……」と。これも確かに納得。

 実際、食料備蓄というのも言うほど簡単ではないらしく、どんなものが貯蔵に向いているのかとか、家族の好き嫌いも鑑みた備蓄、古くなった食料の活用法や狭い家の中での備蓄スペースの確保など、ノウハウを教会員の中で共有することで実践の一助としているようです。

 世の終わりに備えて食料を溜め込んでいる宗教団体……と聞くとなんだか怖いですが、世の終わりが来なくても災害時への備えにはなっています。実際問題、そういった思想がなければ普通の人は食料備蓄をあまり考えないし、備蓄ノウハウの研鑽・共有などもしません。特異な思想が本人たちの意図しない形で社会的に意義ある活動となっているのも、宗教あるあるです。僕も久しぶりに危機意識を喚起されたので、とりあえずペットボトルの水を買いに行こう。

***

 なお、スープ会はどこのモルモン教会でも実施されているわけではなく、渋谷教会のみとのこと。13時半頃から始まります。「ご飯だけ食べに来てくれてもいいですよ。そういう人もいますので」と言われました。勧誘の類はその場ではとりあえず無く、電話番号を聞かれました。まあ後々掛かってくるかと思いますが、その際は各々心のままに。

末日聖徒イエス・キリスト教会 (モルモン教) 渋谷ワード
東京都渋谷区桜丘町28-8
080-2149-6115

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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