NHK受信料義務化の裏に「新社屋建て替え費用3400億円」捻出の大命題

デイリーニュースオンライン

今後はスマホやパソコンも受信徴収の対象に?
今後はスマホやパソコンも受信徴収の対象に?

 NHKの「受信料増収作戦」が活発化している。

 同局の籾井勝人会長は3月5日、衆院総務委員会で「(受信料支払いを)義務化できれば素晴らしい」と答弁。続けて「(現在は対象世帯の)24%が払っておらず、公平になっていない」「(支払い義務を)法律で定めていただければありがたい」と発言し、法的に受信料の支払いを義務化してほしいとの考えを示した。

 また、同日に開かれた定例会見では、籾井会長がインターネット時代に対応した受信料制度を研究するプロジェクトチームを局内に立ち上げると発表。同局は2015~17年度の次期経営計画の中で、今後3年以内に「ネット同時配信」の仕組みを構築するとうたっており、過去に籾井会長はパソコンやスマホなどのネット端末でも受信料徴収の対象になることを示唆する発言をしている。

 ネット同時配信が本格化すれば、端末のワンセグ機能の有無は関係なくなる。テレビを持っているだけで徴収されることにも賛否があるが、もし法的義務化とネットユーザーからの徴収が合わされば、誰もが強制的に受信料を支払わされる時代になりそうだ。

「受信料増収作戦」でネットユーザーが狙われる!?

 前述のように、NHKは「ネット同時配信」を実現させていく方針を打ち出している。ネットでも番組が見られるのに現状ではテレビを持っている世帯だけが受信料を支払い、ネットしか使っていない世帯は無料。NHKの制作費や設備費などをテレビ世帯だけが負担している状況のため、それでは「不公平」というのがNHKの言い分だ。

 また、近年はパソコンやスマホが情報ツールの中心になっており、若者世代では「ネット環境はあるけどテレビは持ってない」という世帯が増え続けている。ここままでは受信料収入の先細りは確実であり、NHK内部は危機感を抱いているという。だからこそ、反発覚悟でネットユーザーからの徴収に躍起になっているというわけだ。

 それだけでなく、NHKのフトコロ事情も大きく関係している。

「NHKは新社屋への建て替え工事を予定(2020年ごろ着工予定)しており、その総事業費は3400億円にもなります。免震機能の強化や8K(スーパーハイビジョン)対応設備などを備えるといいますが、普通の民間企業では考えられない額。この巨額の費用を捻出するため、収益アップが局の命題になっている。その大幅増収のメインターゲットとして、ネットユーザーが狙われているのです」(経済誌記者)

 ネットを利用する若い世代は単身世帯が多く、徴収員が対象者を捕捉できないこともある。だが『週刊ポスト』3月13日号(小学館)によると、局内では「プロバイダーにネット料金と一括で代行徴収させる」などといった案が出ており、是が非でもネットユーザーから受信料を巻き上げようという機運が高まっているようだ。

支払いの法的義務化も…NHKの野望着々

 受信料徴収の根拠となっているのは、放送法64条で定められている「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」という条文。だが、これには「放送の受信を目的としない受信設備…(中略)…を設置した者については、この限りでない」との但し書きがある。

 当然ながら、誰もがテレビ番組を見るためにパソコンやスマホを買うわけではない。NHK側は「テレビ放送の受信を目的とした設備」にネット端末が当てはまると主張するだろうが、その解釈をめぐって一悶着起きるのは間違いなく、ネットユーザーの理解を得るのも難しいだろう。

 また、この条文は「契約をしなければならない」と定めているだけで、契約を拒否した場合の罰則はない。

 NHKが受信料の支払いを求めて一般人を訴えた民事訴訟では「NHK側が契約締結を申し入れて2週間たてば強制的に契約が成立する」との判決が、2013年に東京高裁で出されている。一方、同年の別の裁判では同じ東京高裁で「NHKからの契約申し込みと受信者による承諾という双方の意思表示がなければ受信契約は成立しない」と判断された。

 ただし、後者の場合でも「受信者に契約を命じる判決が出された時点で契約締結となる」との判決になっているのだが、いちいち裁判を起こさなければ契約が認められないとなればNHK側にとって大きな痛手だ。これはネットユーザーからの徴収においてもウィークポイントになる。

 このように現行の法律では解釈が分かれてしまうため、籾井会長は法改正による「受信料支払い義務化」について国会で提言したのだろう。

 ただでさえ、NHKは度重なる不祥事や籾井会長の失言で国民の信頼を失ってきている。自らの懐を潤すために強引な受信料増収作戦に乗り出すのではなく、国民感情に沿った公共メディアとしての振る舞いを期待したい。

(取材・文/佐藤勇馬)

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