川崎事件の被害者通夜を実況配信…低モラルなネット生中継の世界

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逮捕・炎上で問題続出…モラルが崩壊しつつある
逮捕・炎上で問題続出…モラルが崩壊しつつある

 YouTubeでのオリジナル動画配信で生計を立てる「ユーチューバー」の活躍がメディアで大きく取り上げられ、若年層を中心に「自分も動画配信で人気者になりたい」というネットユーザーが増加している。ところが、その功名心が悪い方向に作用し、ユーザーが逮捕される事件が発生するなどモラル低下が問題視される状況が生まれている。

「知名度上げたい」で暴走した末の逮捕

 3月8日、静岡県警が兵庫県の無職の男(32)を道交法違反(無免許運転)の疑いで逮捕した。1月25日夜に浜松市の市道で自動車の無免許運転をした容疑。この模様は動画生放送サービス「TwitCasting」(ツイキャス)に投稿されており、男がスーパーの駐車場で知人男性の車を運転し、そのまま公道に出ていく「証拠」が生配信されていた。

 男はニコニコ動画やツイキャスなどで「しんやっちょ」のニックネームで“生主”として活動し、一部ネット上では人気者だった。その一方で批判的な「アンチ」もおり、アンチの通報が逮捕につながったようである。大阪で出演予定だったイベントに向かう途中で逮捕され、その様子も生放送でネット中継されていた。男は警察の調べに「知名度を上げたかった」「何か面白いことをしなければならないと思った」と供述している。

 また、男は逮捕以前に川崎市の中学1年生殺害事件をネタにしたことでも非難が殺到していた。同事件では被害者の上村遼太くんが暴行され目の周りにアザをつくった写真が頻繁にメディアで使われたが、男はそれをマネて左目の周りを黒く塗って動画配信していたのだ。いずれも非常に幼稚な行動だが、そのウラには「目立つ行動をしなければ」という強迫観念のようなものが感じられる。

川崎事件被害者の通夜で「実況配信」も…

 また、上村くん殺害事件に関連してニコニコ生放送の「生主」の更なる問題行動も発覚している。

 15歳の男子中学生とされる生主が、上村くんの通学先や容疑者の自宅に出没。学校関係者や容疑者の家族とおぼしき人物たちの姿をふくめて、現地から生配信していた。さらには上村くんの通夜会場にも突撃し、パソコンを持ちながら会場から出てくる人の様子などを実況。程なく関係者と思われる人物たちに取り囲まれ、口論の末に配信がストップになる騒動を起こした。

 騒動後、生主は「警察に被害届を出した」「あいつら報道陣には文句言わないくせに」などと配信で愚痴り、批判殺到で炎上しても反省したそぶりは全くないようだった。もちろん、マスコミの過剰な報道合戦にも問題はある。だが、だからといって「あっちがいいならこっちもいいだろ」という論理は成り立たず、未成年で個人となれば問題が起きた時に「責任は取れるのか」という観点からも不適切な行動だといえるだろう。

法律違反・脱ぎ配信・淫行事件…無視できない負の側面

 ネット配信にまつわる事件はこれらだけでなく、先月24日には香川県の無職の男(23)が高松駅周辺から「お年玉をこのカップに入れてください」と生配信で呼びかけ、物乞い(こじき)行為をしたとして軽犯罪法違反の疑いで書類送検された。

 また、昨年(2014年)8月には長野県の男(29)が金属製の檻に入れた野良猫を川に沈めて溺死させる動画をニコニコ生放送で配信し、動物愛護法違反容疑などで書類送検されている。同5月にはイタズラ目的で営業中のスターバックスに爆竹を投げ入れる動画を生配信した29歳と21歳の男が、威力業務妨害の疑いで書類送検された。

 数年前には、あるユーザーがスカイプの動画配信を通じて未成年の女の子から裸の画像を入手し、それをネット上で拡散してしまう騒動も起きた。その一方で「閲覧者を増やしたい」という目的で自ら生配信で下着姿やヌードになる“脱ぎ配信”をしている女性ユーザーもおり、もはや無法地帯になっている。また、動画サイト界隈では頻繁にオフ会が開かれているが、未成年ユーザーが多いために「少女と大人の出会いの場」と化し、淫行事件も勃発している。

「何が飛び出るか分からない期待感」がある一方、あまりにも問題が目立っている一般ユーザーのネット生配信。ネットで即席の有名人になれば高揚感を得ることはできるが、サービスの浸透によってライバルが増えれば増えるほど簡単に有名になるのは難しくなり、目立つための非常識な行動につながってしまう。功名心だけでなく、ネット利用に対するモラル教育が追いついていないことも影響しているだろう。また、アクセスを集めることで広告費を増やしたいという営利目的の悪質なユーザーもいる。

 最近は大企業のGoogleが「ユーチューバー」を大々的に売り出すなどポジティブな要素ばかりが強調されていたが、こういった負の側面を無視して動画配信の未来を語ることはできないのではないだろうか。

(文/佐藤勇馬)

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