しゃべる抱き枕…世界を変える“オタテクノロジー”最前線

デイリーニュースオンライン

リアルなCGの世界が体験できる
リアルなCGの世界が体験できる

 日本の技術がオタクのパワーで特異に進化してきたのは周知の通り。その勢いは止まらず、次世代のインターフェース技術もオタクエンジニアたちは、“オレの嫁”に会うため=バーチャルであるキャラクターを現実世界に引っ張り出すために使おうとしている。

 株式会社ジョイアス代表取締役の内村康一氏が、現在、製品化に向けて、クラウドファウンディングで資金調達を行っている『痛すぽ』は、世界初のしゃべる抱き枕だ。目標額50万円に対して、すでに期間半ばにして230万円以上が集まっており、いかに世間の期待が大きいかがわかる。

抱き枕にタッチセンサーを組み込んだ『痛すぽ』。その発想が、バカバカしいを通り過ぎて凄い
センサーは3カ所に設定可能

 二次元の自分の好きなキャラクターのカバーを等身大の枕にかぶせ、寝るなり何なりする(テーブルに置いて一緒にごはんを食べる人もいるらしい)のが抱き枕だが、内村氏いわく、

「夜抱いていると暗くて顔が見えない(残念、上にいくら強く抱いても反応してくれない(残念、なんですよね。それが我慢できなかった私は、遂になでなでするとキャラクターの声が流れるキットを開発してしまいました」

なでなでするとキャラクターの音声が流れる抱き枕向けキット「痛すぽ」を製品化したい | クラウドファンディング - Makuake(マクアケ)

 そこで、触るとしゃべる抱き枕はできないか? と考えたのが2年前のこと。当時、研究生として在籍していた九州工業大学の協力を得て、試作にたどり着いた。

 構造自体はシンプルだ。タッチセンサーと発話装置、通信ユニットが組み合わさったデバイスを抱き枕カバーの専用ポケットに入れ、センサー部分をキャラクターの頭や胸など自分が触りたい場所に貼る。センサー部分を触ると、触り方の強さや回数によって違うセリフをしゃべる。

「頭に装着してなでなですると「気持ちいいにゃ~」と言ってくれますし、胸に装着してなでなですると「やめてよエッチ」と言ってくれます」

 キャラクターは現在3名、セリフは100パターンあり、スマートフォンのアプリを通じて音声データを変更も可能だ(400パターンを用意)。

 かつてファービーというしゃべるぬいぐるみがあったが、原理的にはあれと同じだ。それが日本で勘違いして超進化したわけだ。デリバリー開始は今年6月で、価格は2万円前後である。

 日本の少子化がさらに進んでしまいそうな発明は他にもある。米Oculus社が開発したバーチャルリアリティ専用のヘッドマウントディスプレイ『オキュラス・リフト(Oculus Rift)』。

秋葉原でオキュラス・リフト体験
液晶モニターの上に球面ガラスを取り付け、広視野角を確保している。画面のゆがみはソフトウェアで補正している

 広視野角と頭の動きに合わせてソフトウェアを追随させる機能がありながら、従来品より桁違いに価格が安い。動きの追随機能がない、一般的なゴーグル型モニターが10万円前後するのに対して、発売中のメーカー向け開発キットは、わずか350ドルである。

 日本でも、オキュラス・リフト対応のミュージックビデオがリリース(倖田來未の『Dance In The Rain』)されたり、展示会やイベントでの集客ツール、モデルルームの内覧などに使われたりと、高い注目を集めている。これまで話題ばかりが先行し、市場に結びつかなかったバーチャルリアリティ技術も、オキュラス・リフトという安価なデバイスの登場で一般化しそうなのだ。

 オキュラス・リフトが体験できる秋葉原『G-Tune : Garage』を訪ねた。

 店舗に入ってすぐにオキュラス・リフトの体験コーナーがある。オキュラス・リフトはWindowsマシンに接続され、オキュラス・リフト上と同じ映像(ただし立体映像なので、左右に分割された2画面)がパソコンのディスプレイ上にも表示される。オキュラス・リフトは見かけはごついが意外と軽い。かぶってしまうと視界は完全にCGの中だ。

本物のジェットコースターに乗っている感覚

 まずはお店に勧められた『UnityCoaster2』を体験してみた。東京都の上空をビルからビルへと張られたレールに沿って、ジェットコースターで駆け抜ける体感ムービーである。

 デスクトップのアイコンをマウスでクリックし、映像がスタートする。頭を振るとそれに合わせて視界も動く。振り向くと後ろの風景が見え、横を向くと隣りの席にCGの女の子が座っている。バーチャルリアリティでは没入感という言い方をするが、完全にCGの中へ自分が入ってしまった。

 画面が動き始めた。これは凄い! 本物のジェットコースターに乗っている感覚ではないか。いかに視覚に人間が頼っているか、よくわかる。風もないのに風を感じ、落下してもいないのに急降下に背筋がざわっと泡立った。このクオリティはすごい。360度全面の映像を作るのは、想像もできないほど大量の作業となるだろうが、もしこれでシューティングゲームができたら、完全に戦場である。ゲームの方向がまったく新しく変わるんじゃないか。

 すでにAV女優やアイドルのコンテンツも試作されていた。期待して体験してみたのだが……根本的に“これじゃない”感が強い。ロボットをリアルにしていくうちに、気持ち悪くなっていくのと同じズレを感じた。がんばっているのはわかるが、心に響かない。仮想空間でポリゴンの女の子と浜辺でデートという世界には、心が没入しないのだ。

 バーチャルリアリティにおけるエロスはどうあるべきか。今後、この分野で『痛すぽ』に匹敵するパラダイスシフトがオタクから起きることを期待したい。2次元への憧憬を突き詰めると、それは現実になる。そのテクノロジーを我々は今、手にしようとしているのだから。

『G-Tune : Garage』公式サイト
住所:〒101-0021 東京都千代田区外神田3-13-2 TEL 03-3526-6881 / FAX 03-3526-6880 g-tune-garage@mouse-jp.co.jp
営業時間:11:00~19:30 年末年始を除き無休

(取材・文/川口友万)

「しゃべる抱き枕…世界を変える“オタテクノロジー”最前線」のページです。デイリーニュースオンラインは、ビジネスオタクアニメガジェットカルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧