西川元農水相も毎月20万円を受領…国会議員「顧問料」の黒い実態

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「顧問料」の実態…その多くが「違法献金」か
「顧問料」の実態…その多くが「違法献金」か

【朝倉秀雄の永田町炎上】

 西川公也農水相が2月23日、国から補助金を交付されて木材加工会社や砂糖業界から政治献金をもらっていたとして辞任した。ほかにも国からの補助金交付決定から1年以内の企業から寄附を受けた議員は安倍晋三総理をはじめ上川法相や望月環境相、岡田民主党代表ら、与野党合わせて14名以上にも及ぶ。しかもその中には法律に詳しいはずである弁護士の高村正彦副総裁や東大法学部卒の林芳正農水相も含まれているのだから、呆れるほかない。

 自民党は3月11日、幹事長・国会対策委員長会議を開き、国の補助金は受けてから1年以内の企業による寄附は、原則として政治資金規正法に違反することを、各省庁から企業側に周知させることを決めたというのだが、これも本末転倒だ。企業に法の遵守を求めるより、むしろ国会議員のほうが良識と遵法精神をもつことが先決だろう。

何もせずとも懐に入る月数十万円の「顧問料」

 ところで、西川前大臣の場合も含め「政治とカネ」の問題は目下、補助金公布企業からの寄附の受領のほうにばかり目が向いているようだが、実は違法性の度合いから言えば、政治家たちへの企業からの「顧問料」のほうが断然強い。

 西川氏は落選中の平成22年8月から農水相就任前月の同26年8月末まで、木材加工会社の顧問を務め、毎月18万〜20万円、総額946万円の顧問料を受け取っていたというのだが、西川氏に限らず、何もしないで企業の「顧問」あるいは「相談役」などといった名目で報酬を受け取っている議員は多い。

 これは、法が禁止する「議員個人」への献金にあたらないのか。なぜこれまで見過ごされてきたのか。この「顧問料」に焦点を当てることにしよう。

業務実態がなければ「違法献金」の疑いが強い

 政治資金規正法は、「政治家個人」への寄附は選挙運動に関するものを除き原則として禁止している。もっとも、例外があって、以下の条件ではそれぞれ寄附を受け取ることができる。

  • 個人からは現金や有価証券でない「物品に限り」年150万円まで
  • 資金管理団体や後援会からも「物品に限り」年無制限に
  • 政党からは金銭や有価証券を含め年無制限に(例えば「公認料」など)

 要するに、政党以外からは「カネ」は一切受け取れない決まりになっているわけだ。

 企業が議員に払う「顧問料」は上に挙げた例外のどれにも該当しない。

 大臣、副大臣、政務官ら政務三役でない一般の国会議員は法律上、兼業を禁止されていないから、他の仕事をすること自体は違法でもなんでもない。つまり、きちんと仕事をし、「役務の提供」に見合った報酬を受け取る分には一向に問題がない。

 だが、「顧問」が単に名ばかりで、業務実態がまったくないとなれば話は別だ。何もしない者にカネを払う理由はないから、これは実質的には法が禁止する「議員個人への寄附」。違法献金の疑いが強くなる。

顧問の多くが業務実態のない「用心棒代わり」

「違法献金」と「政党な役務の対価」との分かれ道は結局、「業務実態があるか否か」で決まることになるが、企業の「顧問」を名乗るほとんどの議員に勤務実態などないのが実情だ。そもそも、国会議員などに企業経営のノウハウなどあるわけがなく、役に立つ助言を受けたり相談したりする場面などはおよそ考えにくい。

 にもかかわらず、なぜ企業は、得にもならないのに国会議員に「顧問」などという肩書を与え、報酬を払うのか。それは、何かトラブルが起こったときに事を有利に運ぶためにだ。

「ウチには大物代議士の◯◯先生が顧問として控えている。文句あるか」と暗に相手を恫喝することもできるし、役所が何かクレームをつけてきても、「顧問」たる議員に間に入ってもらうことで穏便に済ますことができる。

 要するに「用心棒代わり」というわけだ。

脱税犯が「特捜対策」として顧問を依頼

 筆者が現職秘書時代に仕えたN議員のもとに、後援会の幹部で医療機器製造会社の実質的経営者のX氏から「おたくの先生に、ウチの顧問になってもらえませんか」という話が持ち込まれたことがあった。

 議員は乗り気のようであったが、筆者は「顧問」というと何となく胡散臭いイメージがあったため、その背景を探ってみると、実はX氏は億を超える脱税で東京国税局から東京地検特捜部に告発され、実刑を喰らうかどうかの瀬戸際であることがわかった。

 当人は国会議員を顧問にすることで、特捜部の心証をよくしようと浅知恵を働かせたのであろうが、そんなことに巻き込まれたくない筆者は議員を説得して、顧問になるのを断念させたことをよく覚えている。

(Photo by Scanyaro via Wikimedia Commons)

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。
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