運び屋化する日本人が急増…東南アジアの最新ドラッグ事情

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バックパッカーの楽園バンビエン
バックパッカーの楽園バンビエン

 インドネシア・スマトラ島の裁判所が5月20日、覚せい剤を密輸しようとした日本人男性に終身刑(求刑禁錮16年)を言い渡した。男性は「身に覚えがない」と無罪を主張している。

 この事件に限らず日本人が海外で麻薬に触れる機会が増えている。しかも、昨今では運び屋に仕立てられたりする巻き込まれ型ではなく、主体的に取引をする側になっているというのだ。

 特に多いのは日本の病院で処方される薬を海外に個人輸入し、クラブなどで売買することだという。なかでも人気が高いのが、日本ではうつ病や不眠症の患者に処方されるニメタゼパム(日本名称エリミン)。

 通称「赤玉(あかだま)」とも呼ばれるニメタゼパムは、合法であるのを良いことに日本では十数年前からクラブや野外フェスといったいわゆるトランスミュージックのイベントでマジックマッシュルーム、エクスタシー、マリファナ、ケタミン(解離性麻酔薬)と共に若者の間で常用されていた。特にマジックマッシュルームやケタミンが違法薬物として指定されるようになってからは、病院で簡単に処方されるニメタゼパムの人気は高かった。

 海外在住の日本人たちのなかには、合法的に日本で入手できる気軽さから違法輸入を繰り返す者がここ数年で増えてきているという。特に多いのがタイである。空港での荷物検査も日本人に対しては比較的甘いことが多いため簡単に輸入できてしまう。日本から運んでくるのは日本からの旅行客で専業の運び屋ではない。

 タイに住む買人から多少のマージンを受け取り、軽い気持ちで罪の意識がないままアルバイト感覚で輸入代行に手を貸してしまうのだ。その多くは友人伝えやネット掲示板で集められているという。

 また、タイは東南アジアの中でも風俗店やクラブ、ディスコといった場所が多く、販売の場所としては最適なのだとか。実際、このニメタゼパムを知人に頼み輸入していた日本人男性は、バンコクのクラブで売りさばき月8万バーツ(約29万)ほど稼いでいた。

「タイでニメタゼパムは手に入りにくいので、夜の女の子たちの間では高額で売れてました。マリファナや覚せい剤に比べ違法性がないので、女の子たちも買いやすいみたいです」

バンビエンではレストランで購入可能

 このニメタゼパムの代行輸入だけでも罪に問われるというのに、中にはもっと大胆に輸入を行っている日本人もいるそうだ。

「ラオスやカンボジアに行き、現地でマリファナやマジックマッシュルームを買いそのままタイに持ってくる日本人もいます。特にラオスは手に入りやすく税関も甘いので、簡単に輸入できます」

 大胆不敵な手口ではあるが、確かに筆者もラオスに陸路で入った際にバックパッカーの楽園と呼ばれるバンビエンでは、マリファナ入りのピザやマジックマッシュルームのシェイクがレストランで堂々と売られていた。一応は違法ではあるのだが、暗黙の了解という雰囲気で気軽に注文できた。

 このように旅行者だって簡単に手を出せてしまうのが、麻薬をとりまくアジアの現状である。とはいえ薬物の使用はもちろん所持、密輸・輸入代行は立派な犯罪である。過去には1994年と2009年にフィリピンとマレーシアに覚せい剤を持ち込もうとした日本人が死刑判決を受けた事件も記憶にあることだろう。

 薬物=破滅。それが成り立つことを忘れずに、たとえ海外旅行でもハメ外しすぎないことだ。

(取材・文/カワノアユミ)

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