銀座のクラブに枕営業は存在する!? 朝日新聞記事をオヤジジャーナルはどう伝えたか|プチ鹿島コラム

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PhoTones_TAKUMA
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『「枕営業」結婚生活害さない』

 枕営業というファンタジックな用語が、朝日新聞に大きく載った(5月28日)。

 まず、夫が銀座のクラブのママと約7年半にわたり「関係」を持っていたことに「精神的苦痛を受けた」として、妻がクラブのママに賠償請求した。すると東京地裁は「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実だ」として、

「売春と同様、商売として性交渉をしたに過ぎず、結婚生活の平和を害さない」と妻の賠償請求を退ける判決を出したのだ。

 え? という判決である。これをオヤジジャーナルが報じないわけがない。その後ウオッチすることにした。まず「日刊ゲンダイ」。ゲンダイは「夜の女たち 枕営業のエッチな状態」と書いてきた(5月30日付)。

「驚いて笑った人も少なくないだろう」という書き出しからはじまり、「気になるのは枕営業の実態だ。俺は一度もいい思いをしたことがないという読者がほとんどだろう」と、自らの購読者層であるサラリーマンのお父さんの心情を代弁する。そして、こうささやくのだ。「実は夜の女たちは肉体を使っている」。

 そうしてフリーライター氏に「店によってはママが太客と1拍旅行をし、若いホステスを同伴して客の連れとセックスさせることもある」などいくつかの例をあげさせた。記事の最後は「男にとって入れ食い状態だ」。お父さんの妄想を刺激する切り口だった。

「東京スポーツ」は「クラブの枕営業にトンデモ判決 冒涜だ 銀座関係者の怒り」(5月30日付)。

 東スポはあるクラブママのコメントを載せていた。「あまりにも夜の銀座の世界を理解してませんよ。7年間、関係が続いていたということは誰が見ても不倫。銀座のママを売春婦と同等とみて冒涜している。みんなが枕営業しているような誤解を与える判決ですからね」

 おそらく世論ともっとも近い内容かも。いちおう最後に「キャバクラ大好きな妻子持ちの男性たちからは「画期的。ほっとした」という安堵の笑いも聞こえてくるが……」とオチをつける東スポ。

「週刊新潮」(6月11日号)は「『枕営業は売春」の迷判決で救われた『銀座6丁目のママ」と、ママ本人に直撃した。そもそもどちらの当事者からも「枕営業」という言葉も出ていなければ、今回の被告のママは性交渉自体を否定している点を指摘する。そのうえで、ママは新潮にこうコメントするのだ。

「裁判官の方には本当に感謝しています。ああいう判決でなければ、私は濡れ衣を着せられた上に悪いとされていたかもしれないのですから」

「売春婦と結びつけるのは私も驚きましたけど、そうでもしない限り、あちらは引っ込まない勢いでした。大体、判決が出たからと言って、皆が皆それを信じるわけではないでしょう……」

 今回、「枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実だ」と裁判官が信じていたのが驚きだったが、ママが判決に感謝しているのを読むと、もしかしてこの無理やりな判決はママへの思いやりだった?とも勘繰れる。理由は謎だけど。

 最後に「女性セブン」(6月18日号)の「さんまもたまげた!ホステスと客のセックスは立派な営業努力」という記事を紹介する。何か関係しているのかと思って読んでみると、銀座好き芸能人として「みのもんた、志村けん、さんま」の名前をあげ、「良かれ悪しかれそんなさんまたちも、たまげた!のが今回の判決だったことだけは間違いない。」と記事は終わっていた。

 この強引な名前の使い方、たまげた!

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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