「孔子学院」で日本も洗脳…世界中に広がる中国スパイ機構の実態

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早稲田大学でも運営されている「孔子学院」(写真/Arabrity)
早稲田大学でも運営されている「孔子学院」(写真/Arabrity)

 こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。

 孔子学院をご存知でしょうか? 孔子学院というのは、中国政府が海外の大学などと提携し、中国語の学習や中国文化の喧伝、中国との友好関係を目的として設立した機関です。世界各国で設立され、日本でも早稲田大学や立命館大学、愛知大学、札幌大学など、10以上の名だたる大学にて運営されています。

 ですが、そんな孔子学院は「中国のスパイ機構、はたまた中共のプロパガンダ組織」という批判が世界各国で起こり、今年の6月30日にはスウェーデンの大学にて閉鎖、またアメリカやカナダにおいても閉鎖が相次いでいます。こうした現状に対し、中国側においては以下のような論調で報道しています。

「欧米の価値観が儒教とは相いれないものなのだろう。彼らは中国が強くなることを怖がっている臆病者にすぎない。これは排外主義だ」

 孔子が確立したのは「儒教」の教えですが、それを欧米各国が拒否するのは度量が狭すぎるというのが中国側の言い分なのです。では実際、孔子学院というのはどういうものなのか。今回は、孔子が説いた「儒教」に主眼を置き、この学院の危険性をお話ししたいと思います。

 毛沢東の文化大革命により、儒教の教えは徹底的に破壊されましたが、近年、中国においては、そんな儒教が見直されています。習近平政権はしきりに「儒教文化の復興」をアピールし、国民が儒教の教えを守ることで中華が繁栄すると謳っています。

共産党にとって都合のいい教え

 僕自身は孔子を全面的に否定することはありません。儒教で説かれているのは、人としての礼儀や道徳、譲り合い精神や目上の人を尊敬するといったことです。それは金ばかりを追い求めている今の拝金主義の中国人を正すうえでも有効な教えなのでしょう。ですが、その教えをよくよく見てみると、国を支配する中国共産党にとっては非常に都合よくできている教えだということが分かります。

 儒教が提唱する人間関係というのは、臣民が君主の言いなりになる。妻が夫の言いなりになる。子供が親の言いなりになる。このように「上の者は絶対」という関係性が重要視されます。ですが、今の世界的な流れとしては、「君主」ではなくて「民主」ですし、「男尊女卑」ではなくて「男女同権」です。儒教の教えは時代の流れとは全くそぐわないですよね? 儒教の中には「女子は学術が無いほうが徳」(女子無才便是徳)といった明らかな男尊女卑の教えもあるほどです。

 こうした教えを煎じ詰めてしまうと、どんなにおかしな政府に対しても人民は物申してはいけない。妻は旦那のDVにも耐えなきゃいけないとなってしまうでしょう。

 中国の歴史を見ていくと、政府は人民の心を掌握するうえでの最適なツールとして、儒教を利用してきたことが分かります。儒教は正しく使えば、礼儀正しい紳士的な人間を生み出すことができますが、ある部分を強調するなどして悪用してしまうと、その立場が上の人間にとっては、「物を言わぬ奴隷」を生み出すこともできてしまうのです。

 中国社会は今、そんな儒教を再び広めようとしているのですが、知識人の中にはそれを茶化すようなツイートを微博(中国版ツイッター)で行っている人もいます。

 例えば、儒教の中には、『礼にあらざれば視るなかれ、礼にあらざれば聴くなかれ、礼にあらざれば言うなかれ、礼にあらざればおこなうなかれ』という言葉があります。

「礼にあらざれば視るなかれ(非礼勿視)」というのは、すなわち YouTube遮断。
「礼にあらざれば聴くなかれ(非礼勿聴)」というのは、海外ラジオの電波妨害。
「礼にあらざれば言うなかれ(非礼勿言)」というのは、ツイッターやFacebookの遮断。
「礼にあらざればおこなうなかれ(非礼勿動)」というのは、反政府デモ禁止。

 こういった具合に、政府が言論統制を行う上で、儒教ほど都合のいい教えはないというわけです。

 今や中国全体が儒教に洗脳されつつあり、それに付随して言論弾圧も熾烈さを増しています。こうした中国の現状を見るにつけ、儒教を第一の価値観とする孔子学院を欧米各国が警戒するのは当たり前。しかも、この機関は中国共産党が全て出資し、運営しているのだから危険もひとしおです。中国国内において行われているプロパガンダを、そのまま海外でも行うことができるのです。

 現状、日本は孔子学院に対して危機感を抱かずに野放しにしていますが、今後、その対応を改めた方がいいと声を大にして言いたいです。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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