「文化芸術懇話会」より問題アリな自民党の勉強会とは|プチ鹿島コラム

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自民党公式HPより
自民党公式HPより

 勉強会とは何か。アホが集まるから勉強会とも言えるし、向上心があるからこそ勉強会を開くとも言える。でも政治家の勉強会の場合は同志の確認、仮の派閥の成分も強い。かつて竹下登が勉強会(創政会)を旗揚げしようと「たくらむ」と、田中派のボス・田中角栄は阻止に動いた。派内でのクーデターの匂いを感じたからだ。引き留めや争奪がおこなわれ「オヤジジャーナル」格好の政局ネタとなった。このあと田中角栄は脳梗塞に倒れ、創政会は竹下派となった。

「本気なのか?」とつい感じてしまう最近の勉強会

 当時中学生の私がなぜそんな騒動を好んで追っかけていたかというと、これもひとつの軍団抗争だと思ったのである。当時プロレス界ではアントニオ猪木率いる新日本プロレスから、長州力の「維新軍団」が独立し、本当に出て行ってしまった。

 長州はただの「軍団」から「会社組織」にすることで、意志を表明したのである。リング外でも馬場・猪木に次ぐリーダーを目指すという宣言。田中角栄のもとから独立を画策した竹下登と同じであった。あの頃「ニューリーダー」という言葉が躍ったのは政治とプロレスの記事だった。なので、それ以来「勉強会を結成」と聞くと、私はザワザワする。派閥の是非はさて置き、政治家の一大野心の表明だと思うから。ウオッチする価値のある案件だと思うのである。

 そう考えると、「本気でやってんの?」とつい感じてしまうのが最近の勉強会なのである。話題になった自民党の「文化芸術懇話会」はまだいい。「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」(大西英男)とか、「スポンサーにならないことが一番こたえる」(井上貴博)とか、彼らの「考え」が伝わったからだ。批判が起きてもまだ「懲らしめたい」と言っている。よくわかった。

 私が問題だと思うのは「文化芸術懇話会」よりも、「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」である。共同代表世話人が武井俊輔氏(岸田派)で「党内でリベラル派と目される岸田派の議員が中心となり、衆院当選2回以下と、2013年参院初当選の議員に呼び掛けた。」(時事通信)という。5月に初会合が開かれた。

 彼らは「文化芸術懇話会」が話題となった6月25日に同じく勉強会をおこなおうとしたが、突然中止となった。漫画家の小林よしのり氏を招いて開こうとしたところ、党幹部から見合わせるよう要請があり、中止したのだ。安倍政権に批判的な小林よしのりを招くプランを発表した段階で、党幹部から反発がくることは予想できたはずだ。それでも仕掛けてみせるから「軍団抗争」が面白くなるのだろう。しかし彼らはあっさりと開催を中止した。

「政治家が勉強会をひらく」ことの覚悟がないことがみえてしまったのである。「ハト派はどこに消えた?」と言われる昨今、彼らにとっては格好のアピールの場になったはずなのに、そこまでの気骨はなかった。これでは「文化芸術懇話会」的な人々がやりたい放題になるのも当然だ。

「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」は今週1日、講師に政治学者の御厨貴東大名誉教授を招いた。党の中央にOKをもらったから無事開催できたとも読める。

 もっとやる気マンマンの「勉強会」がみたい。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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