「遺体をレンタカーで火葬場に」親の葬儀代すら払えない貧困中高年の実態 (1/2ページ)
約50年前に死亡した両親の年金を不正受給していたとして詐欺などの罪に問われた岐阜県恵那市の無職・鈴木光枝被告(86)の初公判が今月14日行われた。検察側は懲役4年を求刑、判決は8月18日に言い渡される。
この事件で被告は、1965年に母が、1968年には父が死亡しているにも関わらず、あたかも生存しているようにみせかけて不正に両親の年金を受給していた。1960年から2014年までの約50年の間の長きに渡り、総額5100万円もの年金を不正受給していたというから前代未聞である。
さらに7月9日にも青森県八戸市で62歳・無職の男が既に死亡した母親の生存を装い年金を不正受給し、詐欺の疑いで逮捕されるなど同様の事件が頻発している。
こうした相次ぐ高齢者による年金不正受給の背景には、言うまでもなく“貧困”がある。無職の中高年にとって、親の年金は生命線だ。冒頭で紹介した岐阜県の事件では、約50年前から受給していたというから、被告が36歳の頃から常習的に行ってきた犯行であることがわかる。
もっとも親の年金が収入源とまではいかずとも、今、親が死ぬと困るという中高年層はすくなくない。預貯金など目ぼしい資産を持たない中高年にとって、親が死ねば急な出費を余儀なくされる──そんな不安もある。
親の死亡時いったいいくらの費用がかかる?
では親が死んだ場合、いったい子はいくらの出費を余儀なくされるのか。
仮に病院で親が死亡したとしよう。まず必要となるのが「死亡診断書」だ。これは病院によって差があるが一般的な相場は5000円から1万円程度だという。
最近、80歳の父親を看取った山本涼太さん(仮名・50歳)は、自宅で介護していた父親の死亡時、もっとも気になったのがやはり「人が死んだ際のコスト」だったと話す。
「うちは病院で亡くなりました。死亡診断書代7000円かかりました。正直、ちょっと高いな、と。でも仕方ないですがね」(山本さん)
母親を早くに亡くし、認知症の進んだ父の介護のため地場食品会社の営業職を辞め、アルバイトで生計を立てていた山本さんの年収は200万円にも満たない。預貯金は自身の離婚、親の介護費用、入院代で使い果たした。父親の年金は足立さん自身の「生活費」でもある。カネへの不安は拭えない。
「死亡したとなるといつまでも病院にはいられません。まずは自宅へ連れ帰らなければなりません。その際、カネの不安からレンタカーでも借りてと思いました。でも遺体を運ぶとなると法的には問題ないそうですが、やはり気が引けて。看護師さんに相談して事なきを得ました」(同)
最初、父親の死亡が確認された際、レンタカーを借り、火葬場へ直行しようかと考えたが、それだとワンボックスカーのレンタカー代金・約7000円がまずかかる。だがレンタカーにそのまま父の亡骸を乗せるのは難しい。自宅へ連れ帰るにせよ、火葬場へ連れて行くにせよ、棺、いわゆる棺桶が必要だ。棺桶の代金はスマホで急ぎ調べると安くても5万円だという。