モノ言う株主・村上ファンドを世襲した“娘新体制”の破壊力

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“物言う株主”の本格復帰か
“物言う株主”の本格復帰か

「アクティビスト(物言う株主)」として一世を風靡した村上ファンドが、証券市場に戻ってきた。

 リーダーとなったのは、村上世彰氏(55)の長女・絢氏(27)である。結婚して野村姓となったが、「村上家の資産」を運用する(株)C&Iホールディングス、不動産部門の(株)南青山不動産、持株会社的存在の(株)オフィスサポートの代表を務める。

逮捕後は“大将”と呼ばれていた

 元通産官僚の村上氏は、ファンド設立後、阪神電気鉄道や大阪証券取引所の株を買い占めて企業を揺さぶり、その手法が東京地検特捜部に嫌われてターゲットとなり、2006年6月、ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引事件で逮捕され、有罪判決を受けた。

 以降、シンガポールに拠点を移し、豊富な資金をもとに、三浦恵美氏などかつてのファンドメンバーに経営を委ねる形で。不動産や株式への投資は行っていたものの、村上氏の痕跡は残されておらず、ファンドメンバーなどは役職のない村上氏を、親しみを込めて「大将」と呼んでいた。

 だが、今回は、C&Iホールディングスなどが、液晶部材などを扱う電子部品商社の黒田電機株約16%を集めたうえで、6月26日、臨時株主総会招集の請求を行い、村上世彰氏ら4人の社外取締役の選任を求めた。

 要求を突きつける直前に娘の絢氏は、7月10日、ブルームバーグのインタビューに応じて投資方針を次のように説明した。

「割安な銘柄、内部留保が多く、それを活用していない会社。経営能力は高いが、コーポレートガバナンス(企業統治)がしっかり効いていない会社」

 そのうえで、こう胸を張った。

「我々は、より株主価値を上げるということに対し第一人者。本来なら、我々が株主になったとき、ただでアドバイスがもらえると喜んでもらいたい」

 堂々のアクティビスト宣言である。それも株主提案した会社の代表として発言しているのだから、世彰氏の村上ファンドは「旧」で、絢氏は新村上ファンドを率いているといっていい。

 といっても、慶応大学を卒業後、モルガン・スタンレーMUFG証券に2年半いて、主に債券畑だったというから、投資業務、ファンド運営、不動産事業のすべてが見習い課程。実質的には世彰氏が仕切る。

 目の大きな世彰氏に似て可愛いタイプという絢氏が、「親娘鷹」となってどんなアクティビストに育つのか。

 証券界は、今、この話題で盛り上がっている。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。『黒幕』(小学館)、『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数
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