栄養価は低い!? 粉ミルクよりも母乳をWHOが推奨するワケ (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

 母子間の免疫システムを真似することはできないが、この受け渡しが起こるのは初乳からせいぜい数日間のみ。生まれたばかりの赤ん坊は細菌などに対する抗体を作ることができない。その間だけ、母親の免疫システムを使って赤ん坊を守るというのがこの仕組みだ。数日を超えると赤ん坊は自分で免疫力を獲得していく。最初の数日、清潔で快適に管理された場所にいれば、病原菌に感染することもなく、母乳の免疫も必要ない。今の日本ではほぼ問題ないだろう。

 ラクトフェリンも現在は酸化を防ぐ形で粉ミルクに添加できるようになった。母乳には他にもビフィズス菌の生育に必要なオリゴ糖や脳の成長に欠かせない必須脂肪酸のアラキドン酸やドコサヘキサエン酸(魚に含まれているので有名)なども含まれている。それも粉ミルクに添加され、免疫グロブリンを除けば、母乳と粉ミルクの栄養価上の違いはない。

 むしろタンパク質やカルシウム量は粉ミルクは母乳を上回り、母乳だけでは不足しがちなビタミンD(授乳中の母親はあまり外に出ないため、ビタミンDの合成量が減ってしまうのだ。ビタミンDが足りないと骨が形成できない)も粉ミルクには十分に添加されている。

 ではなぜWHOは母乳を奨めるのか? 発展途上国の多くは不潔な環境で国民が暮らしている。粉ミルクを溶く水が細菌に汚染されているのだ。そんな状態で子供に粉ミルクを与えたら病気になってしまう。だから母乳なのだ。あくまで安全面からの推奨なのだ。

 母乳が出ないからといって、粉ミルクが悪いわけではない。母親の体調で栄養価が大きく変わる母乳よりも、高い栄養価が必ずとれる粉ミルクの方がいいかもしれない。

 50~60年代は粉ミルクブームで、母乳で育てた子供は病弱で頭が悪くなると言われたものだ。世間の噂に神経質になってもまったく意味がない。母乳か粉ミルクか以前に、お母さんが気楽でストレスのない育児をすることが、子供には一番である。

(文/川口友万)

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