横持ちは絶対NG…持ち方一つで凶器になる「傘」の危険性

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人ゴミで傘を持つ際はくれぐれもご注意を
人ゴミで傘を持つ際はくれぐれもご注意を

 われわれの生活に身近な「傘」。台風や夕立などで傘が活躍する季節であり、夏の日差しを避けるために日傘を常用している人も多い。だが、あまりに身近すぎるゆえに傘の危険性に気付かず、重大事件に発展するケースが増えている。

サラリーマンの「傘殺人」…殺傷能力は十分

 6月26日深夜、55歳の会社員男性が傘で目を突かれて意識不明の重体になる事件が発生。刺したのは同僚である54歳のシステムエンジニアの男。被害男性を含む同僚4人で酒を飲んで帰宅する途中、東京駅付近の路上で仕事のことで口論になり、男の持っていた傘が被害者の左目に刺さった。

 男は傷害容疑で逮捕されたが、被害者の目に刺さった傘は脳まで到達。7月11日に被害者が亡くなり、容疑は傷害致死に切り替えられた。

 傘には十分な殺傷能力がある。2002年5月、広島県で55歳の男性が車の通行をめぐって33歳の男と口論になり、傘で顔を突き刺されて失血死する殺人事件が発生した。同年6月には愛知県で32歳の中学時代からの顔見知り同士が口論になり、犯人の男が被害者の顔を殴打。被害者が倒れると、近くの飲食店入り口の傘立てにあった傘で左のこめかみを突き刺し、死亡させた。

 子供同士の間でも事件は起こっており、2006年には岩手県で少年野球チームの合宿中に複数の小学生児童が折り畳み傘を振り回して「野球ごっこ」をしているうちに、傘が壊れて先端が抜け出て当時小学5年生の男子児童の右目に直撃。男子児童は右目を失明し、左目の視力も低下する被害に遭った。

 また、2011年には長崎県で中学生同士が下校中にケンカとなり、揉み合ううちに一方が傘を振り回したところ被害者生徒の左こめかみに刺さって失明させる事件も発生している。

 基本的に「鉄の棒」である傘は使い方を誤れば十分な凶器になり、こういった殺人事件や傷害事件が少なからず起きているのが実情だ。

身近で恐ろしい「アブない傘の横持ち」

 もっと身近な場面でも、傘の危険性が物議を醸している。それはツイッターやフェイスブックでも度々話題になる「傘の横持ち」だ。

 一般的には先端部分を下に向けて持つ人が多いが、なかには傘の中心部分をつかんで水平に近い状態で持ったり、斜め後方に向けて持つ人がいる。この持ち方だと後ろを歩いている人に傘が当たってしまう可能性がある。

 それだけでも少々危険だが、階段などの段差がある場所では先端が後方を歩いている人の目の高さに達する場合があり、前述したような失明・死亡事故につながりかねないと危惧されている。

 今年5月にはライターのシノヅカヨーコさんが、娘が他人の傘によって傷つけられた体験談を明かして大きな話題になった。シノヅカさんによると、上野駅で娘と一緒に階段を上っていたところ、前を歩いていた女性が「横持ち」していた傘の先端が娘の顔面に直撃。傘の中ほどをつかんでいた女性が、柄の部分に持ち替えたことで先端が娘の顔に落下してきたのだという。

 娘は顔面を突かれた衝撃で階段を2段ほど落ち、その女性は振り返りながらも「舌打ちして去って行った」という。シノヅカさんは「あなたの傘が刺さったんですよ!」と叫んだが相手に反応はなく、娘のフォローを最優先にするためにそのまま見逃した。

 このような事故は思った以上に多く、2013年に東京都が「降雨時における身の回りの危険」について都民3000人を対象に調査したところ、4人に1人が「階段や人混みで前の人が持つ傘にケガを負わされた」「負わされそうになった」と回答している。

 ネット上では雨傘だけでなく「日傘も危険」という意見が上がっており、数年前には通勤ラッシュの電車待ちの列で女性の日傘が目を直撃し、失明してしまったという男性の体験談が注目された。また、2012年ごろには「日傘は目に突き刺さる凶器」だとして、混雑するコミックマーケット(コミケ)では使用を禁止するべきとの意見が一部で噴出していた。

 故意に相手を負傷させるのは論外だが、たかが「傘」であっても意図せず周囲の人を突いてしまった場合に重大な事故に発展する危険性がある。実際に被害がなくとも「危ない」と感じさせる持ち方は周囲に無用なストレスを与えてしまうことになる。

 一人一人がほんの少し注意すれば解決する問題であるだけに、当然のマナーとして「傘の横持ちはキケン」「人混みでの日傘はキケン」という認識が広がること願いたい。

(文/佐藤勇馬)

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