怒号と奇声が飛び交う…認知症患者が集まる“老人病棟”の実態 (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

認知症患者が急増する日本(写真はイメージです)
認知症患者が急増する日本(写真はイメージです)

「お~い! お~い! ヤッホーーーーっ!!! ヤッホーーーーーーっ!!!!」

 大声で老人が発する声が木霊するここは東京都下のある大手病院にある老人病棟だ。

 ただ叫んでいるわけではない。これは体力が落ち、発声がままならないと同時に、嚥下(註:食物を認識して口に取り込み胃に至るまでの一連の過程)がスムーズにいくよう回復するためのトレーニングなのだ。

 この「お~い!」の発声トレーニングに、「うるさい」と腹を立てる老人患者も数多い。しかし腹を立てた患者自身もまたこのトレーニングを受けなければならない。患者にとって「明日はわが身」だ。このトレーニングをきちんと受けなければ退院後の後々まで、食事を取ること、意思を伝える言語の発声にも支障が出る。医師、看護師はもちろん、患者の家族にとっても受けてもらわなければ困るトレーニングなのである。

 最近、腸閉塞を発症し、危篤状態で入院した中沢卓也さん(仮名・84歳)は、術後1週間目にして、この嚥下を円滑にする「お~い!」のトレーニングを受けることになった。だが、やはりトレーニングは嫌だったのだろう。中沢さんは家族にこう懇願したという。

「借金を支払うから、おしっこを取って下さい」

「お願いですから。れ、練習は、か、か、か勘弁して下さい! て、て、て手形47万円、かならず落としますから。こ、こ、今度は本当に期日までにお支払いしますから……。なので勘弁して下さい。おしっこも取って下さい」

 個人で事業をしていた中沢さんは現役時代、銀行や消費者金融での借金も耐えなかった。そのため手形や借金返済が認知症を患った今でも記憶から消されることはない。付き添っている家族は“借金取り”にみえたのだろう。嚥下のトレーニングを促す病院スタッフは性質の悪い“金融屋”に思えたことがありありと伺えた。

「でも、この患者さん大人しいほうです。なかには看護師に暴力を振るう認知症を併発している患者さんもいらっしゃいますから」(老人病棟看護師)

 同じ病棟内に入院中の元中学校長という患者は、家族の面会時はとても大人しい。だが家族が帰ると看護師にグーパンチを見舞う。点滴を外す、ベッドに仁王立ちとなり小便をする、隣の患者のベッドにドロップキックで攻撃するなど傍若無人の限りを尽くす。時には排泄物を投げるなど手がつけられない。

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