「このホテルに泊まりたい!」
遠くは海外から、汐留にあるパークホテル東京・31階フロアの客室に宿泊するためにやってくる人々がいる。
「日本の美意識が体感出来る時空間」をコンセプトに掲げたパークホテル東京では、31階の客室全てアーティストが装飾するプロジェクト「Artist in Hotel」が進められている。現在、17の部屋と喫煙所が、アーティストたちの手がけた作品として変貌を遂げており、アートの中で滞在できるホテルとして注目を集めているのだ。
そんなアーティスティックなホテルで、この夏開催されているのが「YOKAI TOUR Ⅱ - 古今東西妖怪 - YOKAI - 大集合! - 」展である。
25階から34階まで吹き抜けのアートラウンジに、100体以上の〈妖怪-YOKAI-、妖精、モンスター〉にまつわる作品が展示される。
夜には、高さ約30メートルの壁面に、展示作品をモチーフとしたプロジェクション・マッピング映像も投影される予定。
さらに、「YOKAI TOUR Ⅱ」展 特別イベントとして「YOKAI TOUR Night 2015 妖怪アートに囲まれる“Freak out(怖がる、パニくる)”夏祭り」が行われた。
ホテル25階にある都心最大級の約40メートルに及ぶ吹き抜けのラウンジで、大壁面プロジェクトマッピング映像や、DJによる音楽を楽しみながら、フード&ドリンクを片手に妖怪アート作品に触れることができる……。一夜限りの妖怪テーマパークだ。
妖怪たちの宴に足を踏み入れてみよう!
エレベーターを上がり、イベント会場受付のある25階に登ってくると、首のロングな日本女性がお出迎えしてくれた。かの有名なろくろ首さんだ。
その名のとおり“首をなが~く”して、我々を待っていてくれたようである。
受付嬢はろくろ首さん? いきなりの妖怪登場に『ちょっと怖いな……」と、ビクビク。すると「受付はこちらです!」と、爽やかなお兄さんとお姉さんたちが出迎えてくれた。受付は妖怪じゃないのねと、ホッとしたのもつかの間。何だかホテルスタッフの様子がおかしい……?
男性も、女性も猫の仮面をつけている。“中身”は本当にスタッフだろうか?
さらに廊下ではカッパに遭遇!! 手足の鋭い爪がリアルだ。
18歳未満立ち入り禁止。R18指定のあやしげなお部屋
この日は「YOKAI TOUR Ⅱ」展とは別に、「特設 YOKAI ROOM TOUR」という1日限定展示の展示会が開催されており、『拷問遊園地』と、『妖怪四十八手』というテーマの2部屋は、18歳未満は入れないのである。暗闇の中、妖しげな赤い光に浮かび上がる人形や絵画。
エロティックなだけではなく、グロテスクでゾッとするような薄気味悪さがあった。
暗いホテルの部屋に……誰かがいる!!!
エロティックな芸術作品を愛でたあとに向かうのは、真っ暗な廊下。ペンライトを渡されて恐る恐る進む。ある部屋に入るよう促され、足を踏み入れる。
照明は落とされ、眼をこらしてようやく物の形がぼんやりと分かるくらい。ふとベッドに目をやると……
誰か寝ている……!!
てっきり無人だと思い込んでいたので、心臓が止まるかと思うほど驚いた。いつむくりと起き上がってくるか、ドキドキしながら映像を見る。
壁には近藤啓二による短編映像上映作品「エニグマ」が流れている。この作品、実際にあった怪奇話を元にしているそうで、ベッドの謎の人物も相まって相当怖かった。その他にもべったりと手形が付いていたり、バスルームの扉に人影が見えたので、扉を開けたら人形がいたり……。
まるでホテルの部屋を使ったお化け屋敷のようだった。
ホテルの部屋がまるごと作品に! アーティストルームを特別公開
さらにこの日は「Artist in Hotel」で制作された4部屋、「妖怪」、「祭り」、「芸者金魚」、「龍」が特別公開されていたので、見学させてもらう。
成田朱希によるアーティストルーム「芸者金魚」は、東京の空を金魚が泳いでいるようにも見える。こうした窓への映り込みも計算して、各アーティストは作品を描いているそうだう。どの部屋も雰囲気が全く異なる。さらに細かいところまで遊び心溢れる工夫が施されていて、そうしたものを見つける楽しみもある。来るたびに新しい発見がありそうだ。
エレベーターホールでは、アーティストルーム「妖怪」を生み出した馬籠伸郎氏が、カッパをモチーフにした参加型ライブペインティングを開催していたので、参加してみる。特殊なペンを使い、型紙に沿って点々を描いていくのだが、これが意外に難しかった。
続いて向かったのは、26階「鬼夜子(きよこ)のフロア」である。「Artist in Hotel」で「龍」の部屋を生み出した阿部清子氏に密着したドキュメント映像を上映するスペースがあった。また、阿部氏が当日ライブペインティングした作品に、映像クリエイターantymarkがアルゴリズム生成したコンピューターグラッフィックスの光を重ね、背後に広がる東京汐留のパノラマ夜景をミクスチャーするインスタレーション作品を展示する「霊魂」の部屋も。
そして、真夏の夜にぴったりな部屋が、「正体」の部屋。ろうそくを模したライトを頼りに真っ暗な部屋へ足を踏み入れる。部屋はあまりに暗く、手元のライトはあまりにも頼りない。数十センチ先しか見えない中をこわごわと進む。たどり着いた先、暗やみの中に佇むのは阿部清子作品。
暗い中でぼんやり浮かび上がる絵は、更に恐怖心をあおる。
妖怪たちも紛れ込む!? 真夏の夜のパーティー
本日のメイン会場になっている25階アートラウンジ。オシャレなフードやカクテルを片手に、夏の夜に酔いしれる。
すると人ごみの中で、噂の“鬼夜子”こと阿部清子氏、ご本人に遭遇! あのこども(作品)たちの母親にふさわしき(?)容貌に圧倒されつつ、撮影をさせてもらった。照明の具合で何ともミステリアスな雰囲気だが、ご本人は気さくで優しい美人画家であった。
次はスモーキングルームへ。嫌煙家の私の目的は、タバコでなくアート! 「Artist in Hotel」プロジェクトの一環として、25階喫煙スペースもアーティスティックな部屋になっているのだ。なんでも、喫煙スペースを手がけたアーティストは、マロンちゃんという方らしい。
出会って数分なのにサービス満点のベリーダンス、というか、腹踊り?を披露してくれた。モテナイ系女子のひがみ心をぶっ潰す、魅力溢れるマロンちゃん(林 晃久)。外見からは想像できない(失礼!)、カワイイアートを生み出していく。マロンちゃん以外にも、和紙タトゥー体験や、アクセサリー、レジン樹脂製作品などアーティストたちが手売りする露店が並ぶ。
舞台の上では、dublab.jpによるDJパフォーマンス、和風手品師 izumaによるマジックショー、おぼんろplusオタマジャックスによる演劇パフォーマンス『助六』などが行われていた。司会を務めるのは、これまた怪しげな仮面の男。実は、パークホテル東京の宿泊支配人!
きゅうりカクテルに、きゅうりジントニック……。会場にはカッパも!
ラウンジにはムーディーなバーカウンターがあり、たくさんのカクテルが並べられている。
カクテルグラスには白くてトロッとしたお酒と、キレイに巻かれた緑色の何か。なんと、驚きのキュウリ入りカクテル。
その名も「Hendrick’s Kappa Cocktail」。妖怪→カッパ→きゅうりという発想らしい。このカクテルは、「YOKAI TOUR Ⅱ」展が開催されている8月30日まで、ホテルのバーで一杯1500円で飲めるものだが、この日は、同じものが500円分のチケットで提供されていた。
正直、キュウリが入ったカクテルなんて本当に美味しいの? と疑心暗鬼だったが、これが意外に合うのだ。キュウリは決してカクテルの邪魔をしない。
ほんのり甘いカクテルと合わせると、メロンみたいに感じるなんて声も聞こえたくらいである。
「ヘンドリックス・ジン」特設カクテルブースでもキュウリ入りのジントニックも試飲できた。
きゅうりは意外にもジントニックに合う。なんでも、このカクテルのベースに使われているヘンドリックスというジンには、きゅうりとバラのエキスが最初から入っているらしく、不思議ときゅうりが合うのである。
お酒だけでは飽き足らず、フードチケットで豪遊。丸ごと一本キュウリや、コンニャクなど、妖怪や肝試しをモチーフにしたと思しきメニューや、可愛らしいフルーツ串、フライドフライ、ピザなども味わえた。特筆すべきはステーキ! さすがホテル主催のイベント。格安の値段にも関わらず、ジューシーで柔らかく、とても美味しかった。
フルーツ串や、キュウリ串などを片手に会場を回っていると、やたらと浴衣姿の人が多いことに気がつく。 浴衣を着てくれば誰でも参加できる浴衣ドレッサー賞が開催されており、宿泊チケットなど豪華賞品が当たるようだ。
しかし、今宵は妖怪イベント。集まってくるのは、人間ばかりとは限らない。人間に混ざって、尻尾を隠しきれていない妖狐や、妖怪であることを隠そうとすらしていないカッパまで…・・。
たくさんの妖怪が紛れ込んでいたようだ。こうして、妖怪も人間も一緒になって、楽しい一夜は更けていった。
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(取材/尾山奈央)