10年以上続く、「真夏の動物園」のイメージを覆すイベント
真夏の動物園————。
はしゃぐ夏休みの子ども達、降り注ぐ日差し、暑さにダレきった動物達……。そんな真夏の動物園のイメージを覆す、画期的なイベントが上野動物園で行われた。その名も『真夏の夜の動物園』。開園時間の延長や、動物との触れ合いや体験イベント、ビアガーデン、ライブなど、真夏にも関わらず涼しく過ごせて大人も楽しめる要素が満載という、動物園好きには垂涎モノの人気イベントだ。
「真夏の夜の動物園 2015」 08.08[土]〜08.16[日] 上野動物園
イベント開催の経緯を園長の土居さんに話を伺うことに。緊張の面持ちで待機しているとそこには自前の和服に身を包んだ土居園長が!上野動物園、夏の風物詩と紹介された浴衣姿の園長。「真夏の夜の動物園」開催中には、自ら打ち水をして訪れるお客さんに涼を提供する「園長と打ち水」イベントも実施する。
—————どうして、このイベントを始めたのですか。このイベントは10年以上前から開催しています。やはり夏は暑いので、訪れる人も、動物も大変ですよね。例えば、パンダは25℃以上の場所には出られないので、外に出ることが難しいのです。それならば、涼しい時間に動物達を見てもらおうと始めたのがきっかけです。
—————見所はどんなところですか。タテガミオオカミやツチブタなど、夜行性の動物が活動している姿はこの機会に見ていただきたいですね。不忍池の蓮を見ながら夕涼みができるビアテラスや、その上空を飛ぶコウモリも普段の上野動物園では体験できないことなので、おすすめです。昼間の動物園とは違う雰囲気の動物達の姿を、ぜひ楽しんでいってください。
特別イベント「ゾウの運動場に入ってみよう!」
この日行われていたイベントのひとつ、ゾウの運動場に入れるという特別イベントに参加してみた。ゾウの運動場、つまり、いつもゾウさんが過ごしている柵の中である。いつもは入れない場所に入るというドキドキに胸を膨らませながら並んでいると、こんな看板が目に飛び込んできた。
——————“ヒト”。
確かに!! いつもは動物の名前や、学名、分布などが書かれているプレートが人間バージョンになっている。
・ヒト(Human)Homo sapiens 霊長目 ヒト科・分布:南極大陸を除くほぼ全世界・性格:穏やかな個体、凶暴な個体など、さまざま。
動物園が仕掛けるおちゃめジョークを楽しんでいよいよ入場! 大きく、頑丈そうな門を通りゾウの運動場へ。足元はさらさらした砂地である。何やらひとだかりが出来ている。覗きこんでみると、そこには“アレ”が。そう……ゾウさんのうんこである。
ちりとりいっぱいで、1回分およそ10kg。持ち上げるのも一苦労だ。飼育員さんによると、なんと一日に80kgほどのうんこをするそう。 現在、上野動物園には4頭のゾウがいるため、一日300kg前後のうんこがゾウさんの分だけで発生するという……。
膨大なうんこに気が遠くなりそうになっている私の前に現れたのはゾウの足跡。およそ50cmのビッグフットだ。ゾウが体を擦り付けてテカテカになった岩や、ゾウの背中の高さ(約2.5m)を示す矢印もあった。そこここに空いている穴は、穴を掘って冷たい土を自らの体にかけて涼んだ跡だという。ワイルド〜! 普段ゾウ達が生活している空間に入らないと見られない、貴重な“痕跡”の数々。ゾウをとても身近に感じることができた。
さらに毎朝ゾウの体重を量っていると言う巨大な体重計。ゾウの運動場の外には大きなパネルがあり、そこに計測した体重を表示しているそう。乗ったら体重を計られてしまうのではないかとビクビクしたが、最低でも200kgないと反応しないらしい。ほっと一安心。
ゾウさんが水浴びをするという池も、今日は目の前に見られる。なんと深さは1.7mもあるそう。池の向こうにはガラスがあり、普段のゾウたちの視点を体験出来る。
子ども動物園だって、今日は大人も楽しんじゃう
モルモットやうさぎとふれあう子ども動物園も、この日は気兼ねなく大人も楽しめ る。なんと言っても、コーナーのタイトルが「大人のための」なのだから。
※期間中の8月9日、10日、11日、15日、16日には、同じ ようにハツカネズミとのふれあいがおこなわれる。
うちわを使った看板も夏らしさ満点。ボランティアさんの説明を聞いたら、いよいよだっこタイム。たくさんのカワイコちゃん達の中から、好きなコを選んでだっこ!「ふれあいコーナー」は子供たちに優先して遊んで欲しいし、だっこする子ども達を見守っている側だけど、今日ばかりは! 好みのモルちゃんをガッチリだっこ!! もふもふのウサギさんも。悶絶するほど可愛い。夜になるまで待って良かった!
どこまでも続くような蓮の池を背にまどろむ、「音楽の夕べ」
いよいよ夕刻、子ども達よりも大人達が楽しみたい時間がやってきた。ビール片手に“大人の動物園”の気分が高まる。オープンビアガーデンは涼しく過ごしやすい。涼しさを演出する氷柱も設置されていた。
この日は18時30分より、ににぇむにぇさんの演奏が行われた。ポロロンと、耳当たりの良い優しい音色を奏でるアフリカンハープ「コラ」を聴きながらゆったり、まったり。アフリカンハープの「コラ」の音色が心地よい。この日はマリ出身のミュージシャン、ダラマン・ジャバテさんを迎えての演奏。
ちなみに、「コラ」は西アフリカの王様が眠る時、癒しを求める時に演奏されたのだとか。 蓮の葉が醸し出す異国情緒。そして、蓮の花を背に遊ぶワオキツネザル。ここは極楽浄土かな……?
※8月15日、16日にも 音楽イベントが開催される。
知られざる、夜の動物達
さまざまなイベントが目白押しだったが、動物も忘れてはならない。
夜の雰囲気にぴったりだったのは「両生爬虫類館」。ガラス張りの天井なので、屋内でも夜の雰囲気を味わえる。 緑が生い茂る館内は、まるで夜のジャングルに忍びこんでいるような気分だった。【画像 20】イグアナもワニも、ちょっと眠そう……。
続いては夜行性の動物達に会いに行こう。長い足が自慢のタテガミオオカミ、ばっちり活動中! これは夜ならでは! 撮影していると目の前で立ち止まり、カメラ目線をしてくれた。 スカイツリーも点灯する時間。夏の夕涼みは、ぶらぶらと園内を歩き回るだけで気分が昂揚してくる。 大人の時間はまだまだこれからと言いたげに、20時の閉園までたくさんの人が名残惜しそうにビアガーデンで過ごしていた。
子どもの頃は知らなかった、新しい動物園の楽しみ方を発見できる、そんなイベントだった。
- 面白いイベント情報サイト『Evenear(イベニア)』
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(取材/森嶋千春)