[東條英利の「日本人の教養」]

2016年の干支「猿」ゆかりの神社|東條英利コラム

写真は日枝大社ホームぺージより

 新年あけましておめでとうございます。平成28年がスタートしました。今年は申年(さるどし)。正確に言うと、「干支」とは「十干(じゅっかん)」と「十二支(じゅうにし)」の組み合わせからなる周期法となりますので、今年は「丙(ひのえ)」の「申(さる)」となります。

 もともと「申」は、「果実が成熟していくさま」を表すとされ、「サル」というのは、あくまでこの十二支を覚えやすくするために割り当てられた動物に過ぎません。しかし、時には縁起を担ぐことも物事を良い方向へ推し進めるにあたって大事なときもある、ということで、今回はそんな「お申(猿)」にちなんだ神社を少しご紹介してみたいと思います。

 まず、「猿」と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、山王総本宮と称される滋賀県大津市の日吉大社。全国各地で日吉神社とか日枝神社と呼ばれる神社は大概こちら日吉大社からご分霊を勧請した神社となります。江戸三大祭の一つとされる山王祭で有名な東京都千代田区永田町に鎮座する山王日枝神社はまさにその代表的な系列社の一つとなります。

 それではなぜこの猿と言えば日吉大社なのかと言うと、同社が猿を神さまの使いとして迎え入れているからです。もともと日吉大社は平安京の遷都によって、その鎮座地が京都の鬼門にあたることから鬼門除けの神様として崇敬を集めるようになりました。そして、比叡山に延暦寺が造営されると、その地主神として延暦寺の守護神までも司るようになったのです。

 そして、日吉大社の神さまは大山咋神(おおやまくいのかみ)と呼ばれる山の神さまで、その御神格から「山王」と称されるようになったのですが、一説にはそんな山の神(比叡山)に住み着く猿がそのまま神さまの使いとして迎えられるようになったと言います。

 このため、同社では「神猿」と記して「まさる」と読み、「魔が去る」「勝る」を連想することから厄除守護のご神徳があると伝えられ、境内の各所に猿をイメージした装飾が施されております。そして、山王日枝神社では、そんな「猿」を「えん」と読めることから「縁結び」のご利益があるとされ、社殿の両側に位置する夫婦神猿像は右が夫猿、左が妻猿としてその妻猿を撫でれば「恋愛成就」のご利益があると言われています。

「猿」の一字を担ぐ古事記にも登場する神様

 このほか、猿と言えば、そのものずばり「猿」の字を担ぐ神さまもおります。それが「猿田彦毘古神(さるたひこのかみ)」です。猿田彦毘古神は「古事記」にも登場する神さまで、天孫降臨で有名な瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高千穂に降臨される際に、その道案内をした神さまとして有名です。

 ですので、猿田彦毘古神(さるたひこのかみ)は道先案内、つまり、方位除けの神さまとされ、何かを始める時や迷った時に訪れるとよいとされております。そんな猿田彦毘古神を祀る神社としては、三重県鈴鹿市の椿大神社がその総本社として有名ですが、伊勢の内宮近くに鎮座している猿田彦神社も有名です。全国各地にみられる猿田彦神社はこれらの系列に位置します。

 また、猿田彦毘古神はいろいろな神社で合祀されていることも多いので、そのあたりは是非、社名にこだわらず調べてみてください。この他、京都の猿丸神社は猿丸大夫という三十六歌仙の一人をご祭神に祭っております。こちらではその名前にあやかってか、狛犬の代わりに狛猿像を配しております。

 実は、神社と猿の組み合わせは思いの外多く見られるんですね。ということで、1年のスタートはまだ始まったばかりですが、「申」本来の意味に上げられる「成熟」にちなんで、「皆さまのご活躍を更に成熟させる1年となるよう」私も皆さまのご多幸を祈願申し上げたいと思います。

著者プロフィール

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、一般社団法人国際教養振興協会を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

公式サイト/東條英利 公式サイト

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