「祖国が変わった」総連議長もこぼす北朝鮮の変化

| デイリーNKジャパン
「祖国が変わった」総連議長もこぼす北朝鮮の変化

日本政府は10日、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を受け、独自の制裁措置を決定。2014年5月の拉致問題再調査の日朝合意(ストックホルム合意)を受けて解除した、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部の再入国原則禁止などの復活に加え、再入国禁止の対象者を、北朝鮮に渡航した核・ミサイル技術者などに拡大した。

ただ、それで何が得られるかと言えば、効果は恐らく「ゼロ」だろう。

北朝鮮側の金正恩第1書記らは、慢性的な財政難のため「送金能力」を失った朝鮮総連にはほとんど関心がない。北朝鮮産マツタケの不正輸入事件などを巡って朝鮮総連の関係先が捜査対象になった際、北朝鮮側は非難の声を上げたが、それは“ポーズ”に過ぎない。「日本側が我々を敵視するなら、拉致問題の話し合いには応じられない」と怒って見せ、交渉カードにしようというものだ。

何より、朝鮮総連の許宗萬(ホ・ジョンマン)議長本人が、2014年9月に8年ぶりに訪朝した際、金正恩第1書記と面会してもらえず、ガッカリしたとのエピソードが伝わっている。

(参考記事:「祖国が変わった」朝鮮総連・許宗萬議長が不満吐露)

また、日朝間の貿易が全面禁止になって以降、ヒトとモノの往来が激減していることを考えれば、日本からの核・ミサイル関連技術の流入もほとんどなくなっていると考えるのが自然だ。

そもそも北朝鮮にとって、日本との関係改善に動くメリットはほとんどなくなっている。

日朝関係に関する記事などを見ると、「北朝鮮は日本との関係を改善し、経済支援を引き出したがっている」との説明をよく見かける。北朝鮮が、過去にそのような目的をもって行動してきたのは事実だし、今後も長期的には、日本から経済的利益を引き出すことを目指すかもしれない。

しかし現在の情勢下で、日本が経済支援を行うなどあり得ないということを、北朝鮮としても良くわかっているはずだ。仮に、北朝鮮が拉致問題で誠実に対応したとしても、弾道ミサイル開発と核開発の問題が残る。さらには日本やEUが国連で暴いた人権侵害の問題もある。

(参考記事:国連委、北朝鮮の人権侵害を非難する決議採択…日本とEUが主導)

それらをすべて解決して支援を引き出すなど、とうてい出来っこない。とくに人権侵害は、核やミサイルなどと違ってカネ(経済支援)で取引できる問題ではなく、だからこそ、金正恩氏はヤケクソになって暴走していると見ることもできる。

(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑)

もちろん、北朝鮮の暴挙を黙って見ているわけには行かないから、制裁措置を取ることは当然だ。しかしそれと同時に、北朝鮮の「体制変更」を見据えるなど、別次元で戦略を見直す時期に来ていると言える。

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