日本の一部の地域には、遺体がより早く白骨化することで、故人が死後の楽園に行けるとする信仰が残っている。特に東北地方では、その信仰が強く残る地域が多い。東日本大震災で亡くなった人々の遺体が仮埋葬された際、多くの遺族が「早く故人を成仏させるために」、早く火葬することを望んだという。火葬にマイナスイメージを持つ方が比較的多い自分の出身地とは、大きく異なる価値観だと思った。
■古代日本から既にその信仰はあった?!
「腐乱した状態をできるだけ短くして、早く白骨化させる」
どうしてこのような信仰が残っているのか。これを紐解くと、一見宗教的な背景によるものと思われがちだが、なんとそうではなく、それ以前の神々信仰であった。
事実、『古事記』には、神々の祖であるイザナギが彼の妻である女神イザナミの死を悲しんで、死後の世界に下るという描写がある。そこで肉体の腐乱したイザナミを見たイザナギは、怒った彼女や死後の世界の兵たちに追われてこの世に逃げ帰るというくだりがある。
これはまさに「遺体が腐乱した状態にあるため荒々しく恐ろしい存在となった死者」のイメージを表現していると言えよう。このことからも日本では遠い昔から、人が亡くなった直後から遺体が腐乱した状態になると、その人の魂は荒々しい力を持つ恐ろしい存在であるとされていたと推測できる。
■地域によって火葬を禁忌とする地域もあるため注意が必要
遺体が白骨化した時が、故人が荒々しく恐ろしい存在であることを止めて穏やかな状態となり、祖先の神々の仲間入りをする一つの節目の時期とする説もあったが、火葬が取り入れられた背景には、一つにはその「故人が穏やかな状態となり祖先神となる時期」を早めたかったからということも十分考えられる。
推測の域を出ないが、それを後の時代になって仏教風に解釈した言い回しが、「早く成仏させるために」ではないだろうか。
なお、日本にはこのように早くから火葬に肯定的なイメージのある地域だけでなく、火葬に対して否定的なイメージを持つ地域もある。このことも、忘れないようにしたい。
宗教だけじゃなく地域でも異なる火葬への印象。火葬が慣習化された起源とは
2016.03.01 19:00
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