[中国のヤバすぎる正体]

左派勢力が台頭する日本メディアの“マスゴミ”化に中国人が警鐘

中国人が警鐘を鳴らす日本メディアの偏向報道 (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。2016年3月1日、国会上で高市早苗総務大臣による放送局が偏向的な報道を繰り返した場合、電波停止の可能性もあり得るという発言を受け、田原総一郎、岸井成格ら7人のジャーナリストが記者会見を行いました。彼らは高市大臣の発言は放送法に反すると述べ報道の自由を訴えました。

 今回の記者会見に参加したジャーナリストたちは、いずれも現在の安倍晋三政権に対し批判的な立場をとっていることは、以前からネット上などで指摘されています。公共の電波上で偏向的な意見を述べる彼らが報道の中立性を求める姿に、僕は大きな矛盾を感じました。

■意図的に一部の発言を抜き出し悪印象を植え付ける手法

 他にも日本の報道番組を見ていると違和感が生じることが多々あります。2016年3月13日、参議院選挙に向けた自民党の大会上で安倍首相が「選挙のためなら何でもする、誰とでも組む民主党・共産党の選挙協力。こんな無責任な勢力に負けてはいけない」と、選挙対策のために統合を繰り返す野党を批判しましたが、当日に日本テレビ系で放送された「NNNストレイトニュース」では、「選挙のためなら何でもする」という部分のみが大きなテロップで表示されました。

 発言の真意を知らない人は、まるで安倍首相が強硬な選挙対策を行っているかのような印象を持ったでしょう。今回の報道に対し日本テレビ側は、後番組で安倍首相の言葉を正確に描写したテロップを流し謝罪を行いましたが、当然の対応だと思います。

 このような自民党議員の発言の一部を抜き出し、悪印象を植え付ける手法は各メディアで行われます。例えば16年2月に丸山和也参院議員が、アメリカのオバマ大統領に対し「奴隷の子孫」と発言したことは大きな問題となりましたが、あの発言の真意は「差別階級の子孫が大統領まで上り詰めた」というアメリカ社会の可能性を賞賛するものだったのです。

 メディア側の偏向的な報道は時に大きな矛盾を生み出します。テレビ朝日系「報道ステーション」16年2月11日放送回では、日本で円高、株安が進行している原因をマイナス金利の導入と断定し、将来的な経済破綻を予想していましたが、この時の円高、株安は中国や欧州の経済低迷が原因となったもので、日本国内の金融政策はなんら関係がなかったのです。

 しかも報道ステーションは、日本の円安、株高が進行している時期に「実体経済とは無縁」、「急激な円安は経済低迷を招く」という内容の放送を行ったことがあります。この番組は現政権を批判するためなら、論理の破綻すらいとわないのでしょうか。

 2011年7月、中国の温州市で高速鉄道の衝突事故が発生した際、国内メディアは事実隠蔽のために事故を伝える報道をほとんど行いませんでした。当時中国に住んでいた僕は、ネットを利用し日本の報道番組を視聴することにより、重機が車両を埋める様子や正確な被害者数を知ったのです。当時の僕は日本のメディアの透明性に大いに感心し、「マスゴミ」などというメディア報道を揶揄する日本のネットスラングは、偏狭的な一部の右派層だけが使っている言葉だと思っていました。

 しかし、訪日後に日本の新聞や報道番組を長時間閲覧するうちに、特定の政党に対する執拗な批判、安保改正法案における偏向的な報道体制、市民団体に対する過剰な擁護など、一見中立的立場に見える日本のメディアの多数が、左派・リベラル的な姿勢をとっていることを悟ったのです。

 例を挙げると、著名人が発する安直な平和理論は新聞やテレビで大々的に紹介されますが、愛国、保守的な著名人の言動は積極的に取り上げられません。2015年に発表された「ユーキャン新語・流行語大賞」では、「SEALDs」、「戦争法案」、「アベ政治を許さない」、「自民党感じ悪いよね」など、現政権に対し批判的な言葉が候補として数多く選ばれました。流行語大賞の選考委員に3月1日の記者会見に参加した鳥越俊太郎、徹底した護憲派で知られる政治学者の姜尚中ら左派系言論人が多数参加していることから、この賞の思惑は明らかです。

 記者会見で自分たちが迫害されていると訴えたジャーナリストたちですが、新聞や報道番組を見ると、日本のメディアは彼らの意見に支配されているとしか思えません。僕は日本のメディア関係者には、単純な反戦思想や政権批判ではなく、政治的中立性を持った報道を行うことを期待します。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/亀谷哲弘)

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