菅野智之が〝覚醒〟している。
4年目の今季、4勝負けなしで防御率は0.79。7試合に登板、失点はわずか6という安定ぶり(5月7日時点)だ。菅野の登板試合は「1点取れば負けない」状況で、過去3年の平均登板数25試合に換算した場合、16勝が見込める計算になる。打線の援護次第では20勝も夢ではないペースだ。
投球が安定した上に打撃も好調ときている。過去3年の安打数は15本だったが、今季は既に7安打。打率4割を超える「恐怖の9番打者」でもある。
デビュー年に13勝を挙げながら、新人王は16勝を挙げた小川泰弘に奪われた。その後も話題性の多い藤浪晋太郎や大谷翔平の陰に隠れていたが、その後の安定ぶりをみると、まさに「日本のエース」と言っても過言ではない存在に成長している。
■歴代名投手にヒケを取らない投球内容
菅野はプロ2年目にMVPに輝いたが、2リーグ制以降、プロ2年以内でMVPに輝いた投手は以下の6人しかいない。
<2リーグ制以降、プロ2年以内でMVPに輝いた投手>
・稲尾和久 (1957年 2年目・19歳)通算276勝
・藤田元司 (1958年 2年目・24歳)通算119勝
・杉浦 忠 (1959年 2年目・24歳)通算187勝
・木田 勇 (1980年 1年目・26歳)通算 60勝
・野茂英雄 (1990年 1年目・22歳)通算 201勝
・佐々岡真司(1991年 2年目・24歳)通算 138勝
2年目以降尻すぼみとなった木田以外はすべて名投手として球史に名を残している。26歳を迎えた今季の菅野は、順調に名投手への階段を歩んでいると言えるだろう。
また、菅野はプロ入り3年で35勝をマークしたが、近年の名投手・有力投手の3年間と比較しても、勝るとも劣らない実績を残している。
<近年の名投手・有力投手の3年間の勝利数>
・ダルビッシュ有 32勝
・田中将大 35勝
・前田健太 32勝
・小川泰弘 36勝
・藤浪晋太郎 35勝
・大谷翔平 29勝
新人年にはCSで完封勝利を挙げ、日本シリーズでは24勝無敗の田中将大に投げ勝った。前述通り2年目にはMVPと最優秀防御率を獲得。3年目は10勝11敗と負け越したが、防御率は1.91と自己ベストをマークしており、負け越しの要因は1にも2にも「打線の援護がない」ためだった。打線さえ爆発していれば、上記の6人以上の勝ち星を残していたはずだ。
「防御率が良くても勝たねば意味がない」――今季の覚醒は「エースの自覚が芽生えた」証拠でもあるだろう。
「原辰徳の甥、ではなく菅野智之として認められたい」。そんな言葉を発するエースは、数年後、恐らく名監督を「菅野の伯父」と呼ばせていることだろう。
- 文・小川隆行(おがわたかゆき)
- ※編集者&ライター。『プロ野球 タブーの真相』(宝島社刊)シリーズなど、これまでプロ野球関連のムックを50冊以上手がけている。数多くのプロ野球選手、元選手と交流がある