女性の匂いを嗅いだら逮捕?電車内の“触らない痴漢”論争への疑問

“触らない痴漢”が議論に(※写真はイメージです)

 バラエティ番組『ジョブチューン ~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』(TBS系)で5月7日に「触らない痴漢」について紹介されて以来、メディアやネット界隈で波紋を呼んでいる。冤罪リスクが高まる危険性について、世の男性から怒りや男性専用車両を求める声が高まっている。

■『卑わいな言動』の拡大解釈? 触らずに痴漢認定

「元警察官衝撃のぶっちゃけSP」と題した7日放送のバラエティ番組『ジョブチューン ~アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』。ドラマや映画では描かれていない犯罪などをランキング形式で紹介した。

 その第1位に選ばれたのが「女性が気を付けた方が良い、体に触らない痴漢」だ。同犯行について、今年3月まで現役だった元鉄道警察隊長の澤登真珠枝氏は「混雑に紛れて好みの女性の側に行って、体に触らず、髪の毛の匂いを嗅いだりちょっとスカートを触ったりして満足を得る痴漢」と解説。「警察庁と協議を重ねて、あらゆる法令を駆使して検挙している。昨年(2015年)も相当数を検挙した」と述べた。また、そうした痴漢容疑者は「ホームで物色している」と話し、彼らの行動を見て検挙に至っていることを明かした。

「触らない痴漢」について田中みな実アナ(29)が賛同し、後ろから髪の毛の匂いを嗅がれたり耳元で「ハアーとやられること」があると実体験を告白。出演者や観客から驚きの声が上がった。

 一部メディアも同内容について取り上げ、「東京都の迷惑防止条例では、直接的に体に触れる行為や盗撮などとともに『公共の場所又は乗物において、卑わいな言動をすること』が痴漢行為に当たると規定されています。『卑わいな言動』という言葉は曖昧で幅広い行為に当てはめることが可能(「女性の匂いを嗅いだら逮捕? 「触らない痴漢」の出現で新たな冤罪リスク〈dot.〉」法曹関係者の声抜粋)」と補足解説。SNSを中心に波紋を呼んでいる。

 長年問題視されている痴漢。電車内を中心に発生し、その容疑者の大半は男性だとされている。

 近年、痴漢に対する問題意識が高まる一方、冤罪を生む可能性についても指摘されている。一部では示談金狙いとも思われる痴漢冤罪も存在し、3月20日放送のバラエティ番組『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)では、痴漢と疑われたら「全速力で走って逃げろ」「無視しろ」などと弁護士たちが主張していたばかりだ。

 今回話題になっている「触らない痴漢」について、世の男性からは「いい加減にしてくれ」と言わんばかりに怒りを露わにする人が多い。そんな中、「トイレみたいに男性専用と女性専用で完全に分けて欲しい」と男性専用車両の設置を訴える声や「男は呼吸するな!出来ないならガスマスクしろですか?」「そのうち見ただけで痴漢扱い」と皮肉まじりの意見も少なくない。

「たまたま乗り込んだ満員電車で運悪く痴漢に間違えられて、冤罪で人生を棒に振るかもしれない。世の男性からしたら、たまったもんじゃありません。鉄道会社や鉄道警察は、乗客が快適に乗車できる環境作りを意識してほしいです。意見が多く出ているように男女別の専用車両を増やすことを検討しても良いのでは。顧客満足度が上がるのみならず自分たちの仕事も減るんですから、一石二鳥ではないでしょうか」(報道関係者)

 ちなみに2009年6月には、西武ホールディングスで男女平等や痴漢冤罪対策(カメラ設置に比べて安価)として男性専用車両の設置が提案されたものの、「利用者からの要望が少ないから」と実施が見送られている。はたして世の男性が平穏な電車移動ができる日々はやってくるのか。

文・海保真一(かいほ・しんいち)
※1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。週刊誌で執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『格差社会の真実』(宙出版)ほか多数。

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