「弁護士に一任」に既視感?都知事候補・鳥越氏に問われる説明責任

著作「そのニュースちょっと待った!」より

 東京都知事選の野党統一候補でジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)に降って湧いた「女性トラブル問題」。7月21日発売の『週刊文春』(文藝春秋)が、2002年に鳥越氏が女子大生にムリやりキスをしたり、ホテルに連れ込もうとしたという疑惑を関係者の証言を交えて報じており、選挙戦に大きく影響を与えようとしている。

 鳥越氏は同日、弁護士を通じて文春側を刑事告訴。「明確な選挙妨害であり公職選挙法で禁止される行為にほかならない」と弁護団はコメントを発表した。週刊誌は店頭に並ぶまでに時間がかかるため、実はマスコミ関係者は前日に誌面を目にすることができる。

「20日の鳥越さんの街頭演説はお祭り騒ぎでしたよ。あんな選挙戦、なかなか見ることはできません」と話すのは取材にあたった全国紙記者の証言だ。

「この日は世田谷区の保育園を皮切りに、都内2カ所で街頭演説の予定が組まれると事前に発表されていました。保育園を視察─街頭演説で待機児童問題を訴える、という流れだったのでしょう。でも、集まった記者の興味はもっぱら女性トラブル問題。さすがに報道の現場に長年携わる人物だけに期待していた。しかし、最初の現場となった保育園で『淫行疑惑が』と記者のひとりが切り出した瞬間、囲み取材は打ち切りに。何も発せず車に乗り込んでしまい、報道陣はがっかりしていましたね」

■舛添前知事とまったく同じ「弁護士に一任」

 次に鳥越氏が向かったのは品川駅前の街頭演説。

「この演説には民進党の辻元清美議員、山尾志桜里議員、日本共産党の吉良佳子議員、田村智子議員が応援に駆け付けましたが、どういう運命のイタズラか、疑惑が持ち上がったこの日に限って全員女性でそうとう気まずかったと思います。演説終了後に他社の記者に声をかけられた山尾氏は、名前を呼ばれただけなのに『何も知りません』と言って、逃げるようにその場を去っていきました」(前出・記者)

 結局この日は街頭演説でも記者団の問いかけに一切応じることがなかった鳥越氏。さすがに刑事告訴した翌21日には、JR中野駅での演説後に囲み取材に応じたが「(文春の記事の内容は)事実無根」とする一方、女性との面識などについては、「弁護士に一任している。具体的な事実を言うのは控えたい」とけむに巻くのみ。その姿はつい最近、”政治とカネ”の問題で追及された舛添要一前都知事を連想させるものだった。

「『住んでよし、働いてよし、環境によし』をキャッチフレーズにする鳥越さんですが、浮上したのが女性トラブルでは目も当てられない。すでに現場では活字にするのを控えたいヤジも生まれています。鳥越さん陣営ではすべて弁護士に任せ、今後も具体的な言及はしない方針でしょうが、ジャーナリストならば自らの言葉で反論すべきという批判も出ています」(前出・記者)

 かつて『サンデー毎日』(毎日新聞出版)編集長時代には当時の宇野宗佑首相の女性問題をめぐる告発記事を掲載し、退陣に追い込んだ鳥越氏。とはいえ現在の姿には、政治家に説明責任を求めたジャーナリストとしての矜持はみじんも見られない。31日の投開票まで残りわずか。不安を持つ有権者が納得するような説明は行われるのだろうか。

文・佐々木浩司(ささき・こうじ)
※1980年群馬県生まれ。スポーツ誌の契約記者を経てフリーに。現在は主に、週刊誌やビジネス誌で活動中。得意分野は芸能、プロ野球、サッカーなど。主な著書に『洗脳のすべて』(宝島社)など。
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