2月に清原和博が逮捕されたとき、当コラムで「私が思う清原の本当の罪」について書いた。清原の本当の罪とは「野球ファンの今後の人生にふっと暗い影を落とすこと」ではないか、と。
プロ野球はもちろん、甲子園で高校生スラッガーがホームランを打てば打つほど清原を思い出す。その都度やるせなさを野球好きは感じることになる。
『だからあえて言うのだけど、清原には「我々のために」きちんと再起してほしい』と締めた。
野球シーズンとなり、私の嫌な予感は現実となった。過去のVTRをもとに高校野球の素晴らしさを伝える番組では、当然のように清原には触れていない。しかしスルーすればするほど視聴者は清原の影を感じ取ってしまう。いったいこの無限地獄はいつまで続くのか。
この野球ファンの悶々とした気持ちに対し、真正面から勝負してくれた試みがあった。それが10日発売の『Number』の特集「甲子園 最強打者伝説。」である。
表紙はPL学園時代の清原で、特集トップも清原。清原が高校時代に放った甲子園歴代最多13本塁打にスポットをあてている。なんと、打たれた投手全員に取材して、今あらためて清原への想いも聞いているのだ。
あれから30年以上経った「高校球児」は現在はいいおっさんである。だけど清原との対戦については昨日のようのことに語る。ある者は、毎年夏になると甲子園の打席に清原がいる夢を見る。それは一生付きまとうだろうが、それも悪くないと考える。ある者は、清原にホームランを打たれた記憶をしばらく封印していたが、今は誇りであり人生の大事なものだと思えるようになった。ある者は、年を追うごとに、野球中継に映る清原に「頑張れ。頑張れよ」と心の中で叫んでいた。
《清原と向き合った男たちは、それそれのホームランを誇りとしていた》。
だからこそ。行間からはメッセージが伝わってくる。最後のページには編集後記があり、編集長の言葉が載っていた。「拝啓 清原和博さま 」というタイトル。
「あなたのホームランに、一体どれだけ励まされつづけたことか。」
「みな、あなたと真剣勝負をした記憶と、あなたと同時代に生きたことを誇りにしておられました。あなたが野球に帰ってくるためにできることはないか考えておられました。」
「この特集記事は、あなたに励まされつづけた私たちからのプレゼントです。あなたが再び小誌の誌面に登場する日が来ることを私は信じています。」
今回の「Number」の企画は心のモヤモヤを吹きとばしてくれた。あの頃の清原の功績は変わらないし、実際に今も清原と対戦したことが人生の糧になっている人たちがいる。
さぁ、清原、今回のこのボールをどう打ち返す? 時間がかかってもいいから、皆の「期待」に応えてくれ。あの頃の甲子園のように。
最後に。本来ならこの企画は、夏の甲子園大会を主催する朝日新聞がやるべきではなかったか? 高校野球に清原は「いなかったこと」でこのままいくのですか? 青春のいいとこどりで終わりですか? 私はそう問いたい。
著者プロフィール
お笑い芸人(オフィス北野所属)
プチ鹿島
時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)など多数。