「寝起きに手がしびれました。何か病気でしょうか?」
顔を真っ青にして訪ねてきた患者さんがいました。ここで質問です。手のしびれと足のしびれは、どちらが命に関わるでしょう。
しびれにはいくつか種類があります。大きく分けると、正座をした時や手枕を長時間した際の「感覚障害」と、脳関連の症状の際に見られる「麻痺=運動障害」があります。前者は誰にでも起こることで心配無用ですが、後者のように「筋肉が動かない、力が入らない」というしびれは、手でも足でも、脳の病気からきている可能性があります。
もう一つ「神経がびりびりする」「触った感覚がおかしい」というしびれは、脳ではなく脊椎が原因の可能性があり、脳が原因であるしびれほど怖くはありません。
主に手のしびれの原因は脳や首周辺が原因です。呼吸器や心臓に影響することもあり、命の危険性が生じます。対して、足のしびれは腰周辺にあり、最悪の場合は足を切断したり歩けなくなりますが、命に関わるほどではありません。
言うなれば「下半身麻痺と全身麻痺のどちらが怖いか」という話で、しびれの発生個所で言えば、足より手のほうが怖いと言えます。
手のしびれで考えられる病気はいくつかあります。脳の動脈が詰まることで脳内の血の流れが悪くなる一過性脳虚血発作は、短時間でしびれや麻痺が消えますが、手足のしびれで怖いのは脳梗塞や脳出血です。酸素不足により脳細胞が死んでしまい、右半身や左半身を麻痺させる脳梗塞は、血液が足りなくなって3時間から5時間すると、治療しても脳細胞が回復しませんので、箸やペンを落としてしまう、片方だけしびれて呂律が回らなくなるなど「おかしい」と感じたら即座に救急車を呼んでください。
脊髄腫瘍でも手はしびれます。こちらは首、背中、腰のどこかに腫瘍ができたことで感じる、じんじんとしたしびれや麻痺であり、症状を感じた場合、脳神経外科でMRI検査などを早めに受けてください。
この他、椎間板の機能が衰えた結果、椎骨がこすれてすり減ったり、頸椎が変形することがあります。