政府の減税案に冷ややかな視線を送るビール業界

| まいじつ
olinchuk / PIXTA(ピクスタ)

自民党と公明党が12月8日に公表した税制改正大綱において、現在3つに分かれているビールなどにかかる酒税を、55円程度に一本化することが盛り込まれた。日本製ビールの国際競争力を高めるためというのが理由だが、業界のみならず消費者からも、疑問の声が挙がっている。

日本のビール類は、原料や製法によって『ビール』、『発泡酒』、『第3のビール』に区分されている。このうちビールの酒税77円(350ml缶)で見てみると、フランスの6倍、アメリカの9倍、ドイツの19倍と国際基準から大きくかけ離れた状態となっている。これでは国際競争力どころの話ではない。

ちなみに発泡酒の酒税は47円→55円(8円増税)、第3のビール28円→55円(27円増税)となり、ビールのみが22円の減税となる。

今回の税制改正では原料の自由化も検討されている。税率が統一され、原料の自由化も進めば、低価格が強みの第3のビールは商品区分自体が発泡酒に組み込まれ、消滅する見込みが高い。

ビールの減税は、ビール会社の収益改善に直結するかというと、そう単純な話ではない。そもそもビール類市場全体の今上半期の出荷数量は、前年同期の98.5%と昨年に続いて過去最低を更新。最も数量の大きかった1994年と比較すれば、ビールメーカーの幹部によると、「サッポロ1社分が丸ごと消えた計算」というほど深刻で、ビールの消費は落ちこんでいる。

「酵母やホップの違いに勝敗を分けるだけの要因がないいま、中長期の利益創出には共同生産などの協調は必須です。協調路線で国内の効率化を図り、その原資で海外を攻めるほかに成長の道はありません。いまさら減税されたところで、業界が劇的に変わるようなことではないのです」(同・幹部)

政府は2026年10月に酒税一本化を目指すとしているが、遅きに失した感がある。

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