海洋による石油の流出は、経済的な影響のみならず周囲の環境にも多大な被害を与える。
その影響は複雑であり、水質はもとより魚や海獣、水鳥などの諸生物にも被害を与え、かつ海洋生態系に至るまで深刻なダメージを与えるという報告もある。
しかし人がどれだけ注意しても、物理的な流通が行き来する人間社会では、事故の可能性をゼロにすることはできない。
だが少なくとも、これまでよりはるかに効率的に、流出した石油を回収できる可能性が示された。
まずは動画をご覧いただきたい。
米イリノイ州アルゴンヌ国立研究所が開発した新素材は、ポリウレタンとポリイミド樹脂でできたシンプルなフォームで構成され、シラン化合物によりコーティングされたものだという。
この新吸着剤は、“ソーベント”と呼ばれる従来の吸着剤とは異なり、油を搾(しぼ)り出しさえすれば、何度でも繰り返し使用できるという利点がある。
しかもその吸収率は、自重の90倍。一度の使用で焼却処理されていたソーベントとは異なり、廃棄物の発生という負担も軽減することが可能だ。
動画のように、吸収した油をローラープレス機で絞り出せば、吸着剤自体は繰り返し使用することができる。