[架神恭介の「よいこのサブカル論」]

『ラ・ラ・ランド』のもうひとつの見方…夢を追うことの功罪を考える

『ラ・ラ・ランド』公式サイトより

『ラ・ラ・ランド』を見てきました。アカデミー賞で6部門を受賞し、日本でも先月24日から上映の始まったミュージカル映画です。

 男女二人のラブロマンスを描いた本作ですが、その一方で、夢を追う人々の姿を描いた作品でもあります(主人公二人はそれぞれバーの開店と女優を目指している)。

■筆者が注目したキースという人物

 そして、今回、筆者が注目した人物は主人公の一人であるセブ(ライアン・ゴズリング 36)……ではなくて、その友人であるキース(ジョン・レジェンド 38)です。こいつがですね、すごくイイやつなんですよ。そして「夢を追う」ことを考えさせてくれる。

 古き良きジャズを愛し、そういったジャズを演じられる店を開くことを考えているセブ。その彼を商業寄りのバンドへと勧誘したのがキースでした。店のオープン資金を稼ぐために、セブは悩みながらもバンドへと渋々と加入します。バンドは大成功を収めるも、「店を開く」という彼の夢に共感し、彼を応援してきた恋人のミア(エマ・ストーン 28)はセブの現状を問題視し、二人はケンカへと至ってしまいます。

 物語の流れとしては「夢を追うセブを脱線させてミアとの別れの原因を作った」キース。ですが、現実を実際的に考えたら、どうでしょうか? そもそもセブはピアノの技量こそ素晴らしいものの、夢へのこだわりが強すぎる偏屈者であり、雇われていた飲食店でも店主の注文を無視してフリージャズを弾いてクビになるような社会不適合者でした。

 そんな彼と、オーディションにも全く引っかからない女優志望のミアの「自分の店を持つ」という夢は、全くの夢物語に過ぎませんでした。資金的にも先行き的にも不安要素しかなく、夢だけを抱えて地獄へ突入するような、不安で不穏なカップルなのです。だってセブ、夢は語るものの、その実、ただのニートですからね。

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