4月14日付のワシントン・ポスト(電子版)は、トランプ政権が北朝鮮に対して、核・ミサイル開発を放棄させるために「最大限の圧力」をかける方針を決めたと報じた。
これまで、金正恩委員長の斬首計画や米韓による一斉攻撃も選択肢の一つとされてきたが、そうした体制転換を目指すのではなく、北朝鮮を核計画放棄の交渉に復帰させ、朝鮮半島の「非核化」を目標とする、としたのだ。
さらに、その目標を達成するために、北朝鮮と取引のある中国企業への経済制裁も準備するが、「まず中国が自発的に北朝鮮に影響力を行使する機会を与える」という。この方針は、国家安全保障会議で正式に承認されたと報じられている。
米国は、空母カール・ビンソンを朝鮮半島近辺まで運航し、いつでも北朝鮮を攻撃できる態勢を整えているが、北朝鮮を攻撃する考えは、少なくとも当面はなく、中国に対して、北朝鮮の非核化を進めるための有効な対策を打てと求めているのだ。
この政策発表で、米中首脳会談の謎が解けた。
4月7日の米中首脳会談で、トランプ大統領は、工業や農業など幅広い分野にわたる中国政府の介入が「米国の雇用や輸出を奪っている」と、市場開放を強く要求した。
ところが、最終的な合意は、米国が抱える対中貿易赤字削減に向けた「100日計画」を策定するということだった。問題を先送りして、中国から何一つ譲歩を引き出さなかったのだ。この態度は、強硬路線のトランプ大統領にしては、奇異にみえる。
おそらく、このときトランプ大統領は、次のように中国に迫ったのではないか。「100日以内に北朝鮮の核開発をストップさせる有効な制裁を打ち出せ。さもなくば、米国は単独で軍事行動に出るし、貿易面でも中国に対して容赦ない条件を突きつける」
そう考えると、空母カール・ビンソンが圧力をかけている相手は、北朝鮮というよりも、中国ということになるのだ。
そして、米国が北朝鮮の体制転換を求めていないということは、米軍の北朝鮮への軍事攻撃はないことを意味する。ただし、それで安心というわけにはいかない。
米軍が北朝鮮攻撃をする可能性は、二つある。一つは、中国が期限の7月までに北朝鮮を説得できなかったとき。そしてもう一つは、北朝鮮が核実験や大陸間弾道ミサイルの発射に踏み切ったときだ。そうなれば、韓国、中国、日本が戦争に巻き込まれ、大変な被害が出るだろう。
そうしたリスクを避ける最もよい手段は、トランプ大統領が北朝鮮を訪問して、金正恩委員長と直接会談をすることではないか。会談のなかで、米国が経済制裁の撤廃、経済援助、そして金正恩体制を保証するのと引き換えに、北朝鮮が核兵器や生物化学兵器の開発・保有を全面放棄する取引をするのだ。おそらく金正恩委員長は、受け入れるだろう。
その場合、経済援助の負担は、当然、日本へ回ってくるだろう。ただ、それはたかだか数兆円の話だ。日本が戦争に巻き込まれるようなことがあれば、損失は少なくとも数十兆円に達する。それを考えたら、負担はけっして高くない。
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 100日猶予の意味が分かった
2017.05.03 10:00
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