前回、川辺など淡水に潜む妖怪を紹介しました。江戸っ子たちにとって身近な存在だった妖怪は、海にもいたそうで、例えば海坊主や舟幽霊がそうでした。
海坊主姿は地域によって異なり大きさも2m~30m以上と様々ですが、かなりの大きさですよね。かつて和泉貝塚(現・大阪府)の浜辺に数日間現れた海坊主は、漆のように黒い身体で、体の上半身だけを海上からのぞかせていたとか。
歌川国芳 『東海道五十三対 桑名』の海坊主
機嫌を損ねると凶暴になり、海の中に引きこまれたり船を沈没させられてしまうこともあるという怖い妖怪です。海で亡くなった人の霊が集まったものが海坊主と言われていました。
北尾政美『夭怪着到牒 』うみぼうず
人に危害を加えることもあるので遭遇したくない妖怪ですが、愛媛県松山市では、海坊主を見ると長寿になる、という縁起のよい言い伝えもありました。
船幽霊海上で遭難して溺死した人たちの幽霊が、船幽霊です。人の形や船の形をしており、日本だけでなく世界中の海に棲息していたそう。