「離婚問題」松居一代の亡き義父・船越英二の代表作映画

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「離婚問題」松居一代の亡き義父・船越英二の代表作映画

作品目『野火』

大映/1959年
監督/市川崑
出演/船越英二、ミッキー・カーチスほか

「このハゲ~~!」の豊田真由子議員に続いて、ワイドショーで話題を独占している“錯乱ヒロイン”松居一代。ブログで意味深な書き込みを繰り返しただけでなく、とうとうYouTubeに動画を投稿し、離婚調停した渦中の夫・船越英一郎の“裏の顔”を暴露してドロ沼の様相を呈している。その常軌を逸した松居の姿は“ホラー”のようで怖かった。

ここで、思い出すのは、英一郎の亡き父の俳優・船越英二(2007年死去=享年84)で、彼は生前、息子と松居の結婚に最後まで反対し、結婚式出席はおろか、松居と会うことすら拒否し続けていたというから徹底している。

息子の英一郎は“2時間ドラマの帝王”としてテレビを中心に活躍しているが、父親は映画中心だった。少なくとも若いころは。とはいえ、テレビの当たり役『時間ですよ』(1970年)でのお人好しの銭湯のご主人のイメージが強いせいか、映画の顔がなかなか想像できない人も多かろう。

彼の映画での代表作は、やはりこの『野火』だろう。大岡昇平の同名小説が原作で、太平洋戦争末期のフィリピン戦線で、敗残兵として山野を逃げまとう日本兵の、とりわけ飢餓に関する極限状態を描いた衝撃作だった。2015年に塚本晋也監督がリメークし、主人公の田村一等兵をも演じて世に問い、こちらも力作だったが、60年近く昔のこのオリジナルも、当然のごとく傑作の誉れが高い。

船越英二がひと皮剥けた演技を見せた作品

それまで、二枚目か二枚目半の軽い役柄が多かった船越だが、この映画の少し前、市川崑監督と出会ってから演技開眼、『穴』(1957年)では共犯者を殺してしまう横領銀行員という悪人を演じたりもした。

そんな船越が、何日も絶食をして役作りをしたというのがこの『野火』であった。その甲斐あってか、負傷したため所属部隊から追い出され、野戦病院に行くがここでも厄介者とされ、亡霊のようにさまよう飢えた兵士の恐怖心を見事に体現し、飢えから戦友の死肉を“猿の肉”と称して食らう仲間たちに慄然とする姿を熱演した。そして、この年のキネマ旬報主演男優賞ほかの賞に輝いたほど。

ルックスがますます父・英二に似てきた船越英一郎。いまごろ、天国で船越英二は『だから俺が言った通りだろ。あの女だけはやめとけと』と、息子の身を案じていることだろう。

(映画評論家・秋本鉄次)

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