近年になって、エアコンとの併用を推奨されて復権した“扇風機”だが、思わぬ事故が報告されている。
「扇風機は、電子レンジや洗濯機、ガスコンロなどと違って、操作を間違える心配が極めて少なく、それだけに使用中に重大事故に至ることはそれほど多くありません。ただ、構造が単純なことや、技術の進歩などの理由から長持ちするため、“経年劣化”による事故が多いのです。昔は火を吹くなどの大きな事故になる前に“動かなくなる”ものでしたが、性能がよくなった分、その前に事故になるのです」(家電の安全対策に詳しい大学教授)
実際に、家電の経年劣化による火災などの重大事故件数は、2015年までの8年間で279件起きている。そのうちの3割は、扇風機による事故で、割合が最多だ。事故報告を見ると、長期使用された製品に不具合が発生しやすく、なかには30年以上という例もあるほか、火災によって家が全焼したという報告も寄せられている。
「設計標準使用期間」の記載がない扇風機は注意
こうしたこともあり、扇風機や換気扇など5種類の家電製品には、2009年から『設計標準使用期間』(製造年や製品の使用期間年数)の表示が義務付けられている。
「経年劣化による事故が増えていることから、扇風機使用者を対象に不具合の程度などを調査したことがあります。回答では、『変な音がする』、『焦げ臭い』などの不具合を感じたことがある人が約30%いましたが、驚くべきことに、それを感じながら使い続けた人は半数以上いました。その理由についてですが、扇風機は最新型であっても性能は大きく変わらないので、買い換えの優先順位が最下位になるからです」(消費者庁)
危険を示す3大兆候は、“熱い”、“振動”、“におい”だ。
「事故を防ぐ方法はいくつかあります。シーズン終了後に押し入れに収納するときはカバーをかける、モーターの部分にたまったほこりをこまめに取るなど、メンテナンスを心掛ければ安全に長持ちさせることができます」(前出・教授)
“まだ使えるから使いたい”というのはエコな考えだが、長年使用している扇風機は、一度おかしなところがないか確認すべきだろう。
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