夏の甲子園「舞台裏」③ 高校野球が郷土対抗ではなくなる日

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夏の甲子園「舞台裏」③ 高校野球が郷土対抗ではなくなる日

 今年の夏の甲子園大会は、出場校49校のうち、公立校が8校。あとは私立高校だ。初出場校は6校だが、公立校で代表の座を勝ち取ったのは福井県の坂井高校だけ。福井県予選を振り返ってみると、初戦で昨夏の代表校・北陸に勝ち、準決勝で春夏合わせて39回の出場を誇る福井商を破ってのファイナルステージ進出だった。

 開校4年目の同校を優勝候補に推す声も聞かれていた。同校の前身は春江工、ソフトバンクの栗原陵矢を擁して2013年のセンバツに出場しており、現野球部の監督、部長は当時のままだ。14年に4校が再編してできた高校だが、同年、春県大会でいきなり優勝している(連合チームで出場)。昨秋の県大会は決勝、今春の同大会は準決勝進出。一目置かれる存在だったのだ。

 総務省の『人口推計』によれば、この10年間で高校生の人口は約70万人も減っている。地方予選に目を移せば、100人近い野球部員数を持つ強豪私立もあれば、ベンチ入りメンバーの20人を割り込む公立校もある。部員数が確保できず、出場を辞退する高校もあった。日本高等学校野球連盟(以下=高野連)が少子化対策で連合チームによる出場を認めて久しい。97年、近く統廃合となる学校同士の“合同チーム化”が許され、今日に至っている。坂井の甲子園出場は、少子化対策のモデルケースにもなるだろう。

 なぜ、そこまでして野球部を存続させたいのかと聞かれれば、日本人は高校野球を見て、郷里を思い出す。その高校の出身でなくても、郷里の代表校を応援したくなる。だからこそ、越境入学に批判的なファンも多いのだが、球児たちは親元を離れ、ケータイの使用も制限され、コンビニにも行けない集団生活まで覚悟してきたのだ。その意味では、彼らを応援してやりたいとも思う。

 しかし、越境入学のやりすぎはいけないが…。中学の硬式野球クラブの指導者がこんな話をしてくれた。

 「将来、プロでやっていけるだけの素質を持った子もいます。そういう球児は高校に進んでから『手抜き』をします。天才だから、努力しないんです。本当に素質のある子は天才集団のなかで自尊心をヘシ折られ、そこから這い上がってやるという環境に行ったほうがいい。

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