「お前、毎日酒飲んでる?」
何の脈絡もなく、唐突にこんなことを殿はたまに聞いてきたりします。
「お前、月1くらいで髪切ってんの?」
「何時ぐらいに寝てんの?」
「お前、帽子何個ぐらい持ってんだ?」
弟子に対し、こういった質問を投げかけてくる時の殿は、最高に機嫌がいい時です。説明します。普段から、弟子に対し優しく、けして無茶なことを要求することのない殿ですから、“機嫌がよろしい時”は、それはもう圧倒的に優しさに満ちあふれ、“仏のたけし”にアップデートいたします。そんな時、弟子への気遣いから、“正直、きっと興味のない、弟子の些細なこと”を聞いてくる傾向があるのです。例えば、10年。芸術文化勲章・コマンドールを“どうやら授与されるらしい”となった際、
「よくわかんねーんだけど、またフランスから勲章をもらえるらしいんだよ」
と、やや照れた感じで、まずはこちらに話題を振って来ると、
「次の勲章は一番上のやつでよ、結構すごいやつみたいだよ」
と、まるで他人ごとのように、喜びをあらわにされたのです。この時、「殿、またですか! 前にもシュバリエってすごいのをもらったじゃないですか。向こうは映画監督に対するリスペクトが半端ないですね。しかし殿はフランスから愛されてるな~」と、素直な感想を声高らかに進言すると、満足気な表情を浮かべた殿は、いきなり、
「お前、住んでるとこ中野だっけ? 駅から近いの?」
と、今までの会話とは何の関係もない、弟子の住居事情を問うてきたのです。正直、殿はわたくしが中野だろうが松戸だろうが、そんなこと、まったく興味がないと思います。が、殿は、弟子といえども、気持ちよく気を遣われたら、こっちだって気を遣って返したいと率直に思う方なのです。
こんなこともありました。