もう10年以上も前、軽く5000曲は入る、大変小さなデジタルオーディオプレイヤーを周りに勧められ購入した殿は、それを1年程使用したあと、弟子の水道橋博士に、
「おい、ちょっとこれに曲入れてくれよ」
と、自身が選曲した、いくつかの曲をダウンロードしてほしいと頼んできたことがありました。が、殿から受け取ったプレイヤーの中身を見ると、たった1曲しか入っていなかったのです。ちなみにその1曲はロッド・スチュワートの「マギー・メイ」。殿は1年間、ひたすらこの1曲だけを聴き続けていたのです。しかし、ロッド・スチュワート一筋にも程があります!
で、その後、殿のプレイヤーは弟子によりガンガン曲を追加され、程なく、殿の好きな曲だけを集めた「決定版・たけしセレクション」が完成したのでした。気になる中身を少しだけ記します。
「雨」森高千里/「恋の十字路」欧陽菲菲/「乙女のワルツ」伊藤咲子/「壊れかけのRadio」徳永英明/「少女の涙に虹がかかるまで」喜納昌吉/「雨に泣いてる」柳ジョージ&レイニーウッド/「Bridge Over Troubled Water」サイモン&ガーファンクル/「More Than I Can Say」レオ・セイヤー/「Wonderful World」サム・クック
が、殿はそんなお気に入りの曲をヘッドフォンで聴くたびに、
「若い頃、さんざんレコードで聴いてきたからかな?やっぱり俺はデジタルに圧縮した音って違和感があんだよな」
と、しみじみ“現代の音”についての感想を口にされていました。
とはいっても、一時期よく移動中の車の中で、ヘッドフォンを耳にさし、ノリノリで首を揺らしながら聴いていたのですが、時にノリ過ぎて、サビの部分になると、つい声を出して陽気に歌い上げ、こちらを驚かせたこともありました。そんな時はできるだけ目線をそらし、聞こえないふりをしてやり過ごしました。