正直言って和久井はもう大人だし、青春真っ只中のキュンキュン恋愛マンガをおもしろいとは思えません。大したことでもないのにいちいち大げさに騒いで、泣いたり傷ついたり……はいはい、大変ですね青春は。
……と思ってました、つい先日まで。 だけど恋をしたら、めちゃくちゃキュンキュンモードが蘇ってきたんですよ! いやー、些細なことでグラグラしますよね、恋してるときって!
「あれって好きのサイン?」 「仲よさそうに話してた女性は誰?」みたいな。
一条ゆかり先生が、少女マンガを描くために離婚された気持ちがよくわかります!
今夜のKISSマンガ『アオハライド』『アオハライド』は、女子高生の双葉がトラウマを背負った洸(こう)や、その友だちとなんやかんやする話です。仲よしの女子も洸を好きになってライバル関係に陥ったり、洸と同じトラウマを抱えた女子高生との関係が怪しかったり、もうヤキモキヤキモキヤキモキヤキモキさせられます。
ところで最近、この連載のおかげでキスシーンばっかり探してるうちに、ある場面に注目するようになりました。
最初のキスはアクシデントで、次のキスはその口直しってかやり直しパターンです(やだ、“口”直しだなんて!)。
「イヤじゃないなら 目 閉じて」やり直しのキス洸と双葉もこのパターン。 しかも2回もやり直しします。 1回目のやり直しは洸が双葉の腕を掴んでの不意打ち。 それに怒った双葉に、2回目のやり直しを提案して洸は言うんです。
「イヤなら逃げればいい」 「イヤじゃないなら 目 閉じて」
「はーい、閉じまーす!」ですよね。 うまいですよねー、少女マンガの男子って。 たとえば「イヤじゃないならキスして」とか言われたらやりづらいじゃないですか。 イヤじゃないけど、能動的になるのは恥ずかしいですもん。
それに愛の行為で「あれして」「これして」って言われることほど、興ざめなことはないじゃないですか。 でも目をつぶるだけなら、受け身のままでいられますもんね。
ああもうドキュンズキュン高鳴っちゃいますね。 だけど照れた2人はついつい余計なことを言い出して、ちょっとした口論になってしまいます。しかもその内容は、洸の女性問題(っていうと政治家みたいだな!)。
傷ついて逃げ出す双葉。
あー、でも大丈夫ですよ。リアルとちがって少女マンガで発生する女性問題は、大抵の場合勘違いか事情があるか、アクシデントですからね。リアルなら辛すぎることでも、安心して疑似ヤキモキを楽しめるのが、少女マンガの魅力です。
(監修・文:和久井香菜子、イラスト:菜々子)