北海道や東北の一部で現在も残る棺に十円玉を入れて火葬する理由とは

| 心に残る家族葬
北海道や東北の一部で現在も残る棺に十円玉を入れて火葬する理由とは

主に北海道や東北に見られる火葬の風習なのだが、十円玉を棺に入れて一緒に火葬するというものがあるのはご存知だろうか。北国育ちの私がまだ幼い頃に母に渡された金糸のお守り袋が手元にあるが、これこそその十円玉だと知ったのは成人後間もない時の事だ。北国ではこれが死後三途の川を渡る際に必要な所謂冥銭(六文銭)であるが、遺族が十円玉についた遺灰や煤(すす)を洗わずにそのまま持っているとお守りや厄除けになると言われている。

■冥銭 六文銭 とは?

日本で一般的に知られる冥銭とは紙に六文銭を書いた紙を棺に入れて火葬するというものだ。ではなぜ、一部の地域でこの様な風習が見られるのか。

三途の川の渡し賃として昔は六文銭を一緒に火葬し滞りなく冥界へ行けるとされたのは有名な話だが、棺に金属類を入れる事は禁止とされている為、殆どの地域は紙になったという。だが、一部の地域でのみ『六文銭=銅銭=十円玉』という認識が残り今でも十円玉を入れて火葬をしているという。

■火葬の際に金属は基本的には入れられないが…

前述でも述べたが、納棺時に金属を入れる事は原則禁止だ。これは貨幣損傷等取締法違反として刑事罰が規定されている事や、火葬を行う炉に対してダメージを負わせない為である。しかし習慣としてこれらが火葬場で許可されているのは事実だという。杓子定規に規定を守らせると遺族の感情を逆撫でし兼ねない為、炉にダメージを与えない範囲で許可がされている。

貨幣でも五円玉や五十円玉を入れる遺族もいるが、アルミが原材料の一円玉は溶けると遺骨に影響が出る為禁止の所が多い。

■火葬後の十円玉はお守りに

棺から取り出した十円玉を私の親族はお守り袋に入れて仏間に、引き出しに、それぞれ入れていた。
私はといえば受験や就職の時に袋ごと汗いっぱいの掌に握りしめて合格を祈っていたものだが、それというのも故人と一緒に焼かれたものだから大事な時に持っていなさいとよく祖母に言われたからである。

地域や家族によって十円玉のその後は様々だ。三途の川の渡し賃という事で骨壷に入れたり墓前や六地蔵に供えたり、火葬場に処理してもらうというもの。地域独自での風習の為実に多様化している。

■最後に…

私の掌に小さく納まる十円玉入りのお守り袋。溶けて変形している薄鼠色の十円玉が入っているが、その開け口はしっかりと縫い付けられておりもう見ることはできない。しかし確かにあった葬儀の証が残る事に私は感慨深いものがあるのだ。

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