軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太狼XS先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
髪の毛を切った。
二年ぐらいだろうか。ずっと伸ばしていたのでいちばん長い部分は肩より下、背中の真ん中よりちょっと上ぐらいまで伸びていた。いわゆるロン毛であるが自分自身を鏡の中に見た印象としては原始人かホームレスであった。原始人やホームレスを卑下はしていない。原始人は我々の祖先であるし先達であるし師であり神である。ホームレスはシンプルな生き方のひとつであり、俺に言わせれば人間は本質的にすべてホームレスである。やどかりやでんでんむしみたいに背中に家をしょって外を歩いてる人はただのひとりもいない。
「男は外に出たら七人の敵がいる」
みたいな言い方があるが、俺的には、
「男は外に出たらその時点でホームレスである」
と言いたい。もちろん帰ってくればまた家に入るのかもしれないが一億人が出かけて一億人が無事帰還するわけではない。運がよければ帰ってくるのである。いや。運はいいのかな? 運がいいとも言い切れない。帰ってこないほうが運がいい場合もある。
「男は」
と書いたが、これはいまの時代、女性も同じであるから「男と女は」、いや、「人間は」と記しなおすべきである。
「人間は外に出たら七人の敵がいる」
この時、八人目の敵、九人目の敵はどこにいたかというと「家の中」にいた、ということも世の中には多い。
以前、俺が局長を務めている「男の墓場プロダクション」で作ってる映画に出ていただいた先輩が、
「男の墓場だなんてうらやましいよ。うちなんか家庭の墓場だよ」
と撮影の終わった後、グラスを傾けながらぼやいてた。
当たり前の話だが世の中は慈愛に包まれたあたたかな家庭ばかりではないのだ。
なんの話かわからなくなってきたが、肩より下まで伸びていた髪を切ったのである。
坊主頭になった。