まるで世界大戦「冷戦時代よりもひどい」外交官追放応酬劇

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冷戦時代にもなかった過去最大規模の外交官追放の応酬が続いている。

北米2カ国および欧州連合(EU)など25カ国が、3月初めにイギリスで起きた軍用神経剤による元ロシア情報員セルゲイ・スクリパリ氏とその娘ユリアさんの暗殺未遂事件をロシアの仕業と判断し、対抗措置として露外交官の過去に例がない数の追放を発表した。ロシアも対抗処置として、同数の当該国の外交官を国外追放にすると発表した。

「日本と並んでオーストリア政府も、ロシア外交官の国外追放は考えていないと発表しました。オーストリアのカリン・クナイスル外相は3月27日に『ロシアの関与が実証されたとしても、わが国はロシアとの対話の門を開けておく』と述べ、ロシア外交官の国外追放を実施しないと表明したのです。6月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、オーストリアを公式訪問する予定なので、オーストリア側にはプーチン大統領の訪問に障害となることを避けたい意向が強く働いたと思われます」(在英日本人ジャーナリスト)

スイス同様、中立国のオーストリアは、冷戦時代から東西両欧州の架け橋となってきた。旧ソ連・東欧共産圏からは200万人の政治亡命者がオーストリアに逃げ、“難民収容国家”の名称を得たほどだ。同時に、ロシアに対してはほかの欧州諸国より歴史的に友好関係を築いてきたことも事実だ。

オーストリアとロシアの関係性

「オーストリアでは昨年末、中道右派の国民党と極右政党自由党の連立政権が発足しました。首相のセバスティアン・クルツ氏の連立政権が対ロシア制裁に消極的な理由として、極右政党自由党が親ロシア政策をとっており、EUの対ロシア制裁の解除、クリミア半島のロシア所属の公認を支持していることもあるでしょう。そのため、自由党からクルツ首相に圧力があったのではないか、という憶測が生まれてきているわけです」(同・ジャーナリスト)

オーストリアにとってロシアはベストテンに入る貿易相手国という事情も見え隠れしている。EUの対ロシア制裁後、対ロシア貿易は減少してきており、同国経済界では対ロシア制裁の解除を要求する声が強い。

その一方でイギリス、フランス、ドイツからは、「化学兵器使用に国際社会は毅然とした姿勢で対応しなければならない。その意味で、オーストリア政府の今回の対ロシア政策は問題と言わざるを得ない。非人道的な犯行に対して、中立主義云々の論理は通用しない」と厳しい意見が投げかけられた。

日本にはいまのところ、こうした批判の声は寄せられていないが…。

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