容疑者が逮捕されても「点滴殺人事件」の捜査が難航しそうな理由

| まいじつ
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2016年、神奈川県横浜市神奈川区にある旧・大口病院(現:横浜はじめ病院)の入院患者が相次いで不審死した点滴中毒死事件で、神奈川県警は7月7日に殺人容疑で元看護師の久保木愛弓容疑者を逮捕した。殺人事件としての疑惑が浮上し、特別捜査本部が設置されてから約1年10カ月を経て、事件は解決へ向けてようやく動き出した。

久保木容疑者と患者はいずれも“看護師”と“患者”という接点以外に個人的な接点はないとされる。久保木容疑者は「死んで償う。死刑にしてほしい」とも供述しているというが、無差別大量殺人である可能性が濃厚となってきた。

過去、点滴による殺人事件は、2001年1月に発覚した仙台の『北陵クリニック筋弛緩剤点滴事件』がある。宮城県警に逮捕された守大助受刑者は、1件の殺人罪と4件の殺人未遂罪に問われたが、同年7月に仙台地裁で開かれた初公判以降、一貫して無罪を主張。直前の6月には『僕はやっていない! 仙台筋弛緩剤点滴混入事件 守大助勾留日記』(阿部泰雄弁護士との共著)を出版するなど、冤罪を訴えていた。

最高裁は守受刑者の上告を棄却し、現在は千葉刑務所に収監されているが、無実を訴えて再審請求し、仙台高裁に棄却されたため、現在は最高裁に特別抗告中だ。

「ミスター無罪」と呼ばれる弁護士

守受刑者は逮捕前の任意聴取で容疑を認めていたが、態度を急転させたのは逮捕から4日後に阿部泰雄弁護士と接見してからだ。警察関係者が“ミスター無罪”などと揶揄する弁護士だ。

両事件に共通するのは、動機があまりに簡潔であることが挙げられる。

「仙台の事件を手掛けた捜査幹部は『あんな理由で、あんな大それたことをするのか?』という疑問を漏らしています。こうした疑問を抱くのは捜査幹部だけではなく一般市民や弁護士、判事も同じでしょう。大口病院の事件も動機は『面倒だった』ですから。しかも発覚しないわけがなく、発覚すれば極刑は免れません。ですからなおさら『なぜ?』となるのです」(事件ライター)

大口病院の事件では、供述に基づいた証拠が裏付けられれば、スムーズに立件まで進むだろう。しかし、容疑を認めている久保木容疑者の前に、いつ無罪へ導くことに特化した弁護士が登場するか分からない。弁護士のアドバイスで否認に転ずれば、綿密な立証が求められる。そうなれば事件は振り出しに戻ることになりかねない。

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