二つ目のネガティブな理由として、日経は「科学的な意義を問う声が根強く残る」と、実に抽象的な話を上げている。しかも、
「新粒子発見など研究者の誰もがノーベル賞に値すると太鼓判を押せるだけの成果が出る可能性は極めて低いというのが関係者の見方だ」
と、実にさもしいことを堂々と書いているのである。
別に、ILCの目的はノーベル賞の受賞ではない。未来を切り開き、将来の人類の繁栄をもたらすためにこそ、ILCは建設されるのだ。ヒッグス粒子の謎を解き明かし、「物質」「質量」「重力」等につい解明することこそが、ILCの目的だ。ILCにより、人類は最終的に「重力」をも自由にできる可能性があるのだ。
そもそも、科学技術の研究や実験施設で、事前に成果を確定できるはずがない。あるいは、成果が出るとして、「いつ、出るのか?」など、誰にも分からない。
それでも、「人類の進化」のために、今、科学技術におカネを支出する。これが、過去の人類文明を発展させてきたのだが、日経に言わせると「成果が確定しないなら、カネ出すな」になってしまうようだ。実に「デフレ日本国」的である。まさに、衰退途上国日本を象徴する考え方だ。
ILCは、長引くデフレ下で「さもしい国」に落ちぶれたわが国の進行方向を変える決定的転機になり得る。同時に、ILC建設という需要めがけて、さまざまな技術が開発され、日本国全体の生産性向上に大きく寄与するだろう。
ILCを建設するためには、
「直線型の加速器内で、超電導空間において電子と陽子のビームを収束し、タイミングを合わせて衝突させる」
という、人類史上「空前」といっても過言ではない高度な技術が必要だ。この時点で、既存の技術では実現できないニーズなのである。
無論、現在は前記を実現する技術は確立していない。とはいえ、ILCを実現しようという人間の「意志」がさまざまな技術開発を進め、最終的には実現することになる。
日本の未来を「技術大国」と化したいのであれば、ILC誘致を否定するという選択肢はない。同時に、日本国の将来的な繁栄を願うのであれば、ILC誘致に反対してはならないのだ。
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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第283回 国際リニアコライダーと日本の未来(2)
2018.08.22 22:30
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